占星術と統計学の関係

2014/10/29 更新

占星術と統計学の関係

占星術の本を読むと、「占星術は統計学からできている」という記述を見かけます。
「たくさんの人のデータを集めて、おひつじ座ならリーダーになりやすい、おうし座は内向的、ふたご座はおしゃべり好き…という傾向を見つけている…」というような感じです。

しかし、この考え方は誤りです。占星術は統計学を用いて作られているわけではありません。

それに、ここで挙げたような星座ごとの傾向を見つける方法は、正確に言うと”統計学”ではなく、”経験則”に分類されるものです。
だからといって占星術が経験則の集まりなのかといえば、これも違います。
占星術には経験則だけでは説明のつかない多くのルールが存在しているので、強いて言えば、占星術は「オカルト(何がなんだかよくわからないもの)ルールの集まり」となるでしょう。

占星術と統計学の関係について、もう一つよく見かける誤解があります。
「占星術が当たることは統計学で証明されている。」
この考え方も誤りで、占星術が当たることを統計学で証明することはできません。

このページでは、占星術と統計学について、この2つのテーマについてお話しましょう。
理解しやすくするために、下の順序で進めます。

【占星術と統計学の関係】
1.占星術が当たることを統計学で証明することは難しい
2.占星術は統計学で構成されているわけではなく、「オカルト+経験則」で構成されている

以前僕は、占星術が当たることを証明しようとやっきになり、1年以上も統計学にのめりこんだことがありました。
あまりにハマりすぎて、店舗の売上予測までしていたこともあります。
まぁ、今となっては懐かしい思い出です(*^_^*)
それでは、始めましょう。

1.占星術が当たることを統計学で証明することは難しい

「驚異の的中率、80%!」

街を歩いていると、占いの看板にこんなうたい文句が載っていることがあります。
占いの的中率だそうで、結構よく聞く数字です。

「へ~、的中率80%かー、すごいなー」
と、思ってしまいそうですが、この主張は少しおかしいのです。
何故なら、占いの的中率は数字で表せるものではないからです。

占いの結果は、「当たり、外れ」というようなわかりやすいものから、「今回の転職は見送った方がよさそうですね」という、果たして当たったのかどうかよくわからないものまで色々です。
2択の結果ばかりなら統計を取ることができるかもしれませんが、そういう結果ばかりではありません。
当たったのか外れたのか、曖昧な結果も多いのです。

こういう当たり外れが曖昧な結果が多いものは、統計学で分析することができません。
統計学で何かを分析するためには、対象を正確に測定する必要があるためです。

極端に言うと、こんな会話が成立しないといけません。
「あなた、私のこと愛してる?」
「もちろん愛しているよ」
「どれくらい?」
「3.45kgぴったり」
「私は6.5456kgよ? あなたの方が少ないじゃない!」

これができて初めて、占星術は統計学的に有効かどうか判定ができると言えるのです。
占星術には好きや嫌いなど”人の気持ち”が出てくるので、「気持ちの分量」を測れないと、統計学で分析することはできないのです。
気持ちの分量なんて測りようがありませんよね?(´-ω-`)

しかしこういう話をすると、「いやそんなことないよ、”質”も分析できてたよ?」という反論が返ってくることがあります。

それは何かしら、無理やり数字に当てはめて分析しているのです。
統計学は、量を分析するものなので、単位がつかないものは分析できません。
分析方法をよく見れば、数値化についての基準と方法が記載されているはずです。

“統計量”が計測できないということは、統計学が使えないということ。
だから、占星術が当たることを統計学で証明することは難しいのです。

2.占星術は統計学で構成されているわけではなく、「オカルト+経験則」で構成されている

日本では、星座ごとの運勢占いが盛んです。
「おひつじ座のあなたの性格は…」
「おひつじ座のあなたの恋の傾向は…」
「おひつじ座の上司はこんな人…」

こういう説明に接した人は、こういう風に考えます。
「なるほど。占星術って、星座ごとにまとまった傾向があるものなんだ。
きっと、その誕生日の人たちを集めて共通する性格やなんかを分析したんだろうな。
占星術って、統計学なんだ!」

まぁ、無理もありませんね。
しかし先に説明したように、これは量を測っていないので、統計学ではありません。
こういうものは、「経験則」と呼ぶのです。

ですから、この意味で言えば「占星術は経験則」と言えなくもありません。
ところが、この「経験則の星占い」は長い間使われてきた実際の占星術(クラシック占星術)とは異なり、あくまでも遊び程度のものなのです。

クラシック占星術では、占いに必要なルールやプロセスが厳密に決められていて、そのルールは、由来も根拠もほとんどわかっていないものばかりです。
(エッセンシャル・ディグニティ、アクシデンタル・ディグニティ、レセプション、アスペクトなど)
ですから、「占星術は経験則で構成されている」とも、言えないのです。

まとめると、占星術は統計学でもなく、経験則でもなく、「オカルト(理由がよくわからない)ルールを集めて、それを経験則で磨いてきたもの」と呼べそうです。

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◆◇◆補足1:「驚異の的中率、80%!」◆◇◆

この数字について、統計学的な立場から補足をしておきましょう。
もしこの数字が正しいとすると、統計学的には、占いの信頼性は99%を超えてしまいます。
ほぼ100%、占星術には何か神秘的な秘密があることになります。

「占いは当たるか当たらないかの2択である」という無茶な前提を元に、ちょっと計算してみましょう。
100回占いをして、何回当たれば偶然ではないのでしょうか。
つまり、統計学的に占いの有効性を証明できるのでしょうか?

平均はN/2
標準偏差はルートN/2

標準偏差2で相対度数が0.9544
(本来標準偏差は1.96にして相対度数を95%にすべきところですが、計算を簡単にするために2に設定します。)

50+-(ルート100/2)×2=40~60

40回未満、もしくは61回以上当たるならば占いの有効性は95%の確率で支持されます。
40回未満を切り捨てれば実に97.72%の確率で有効性が証明されます。
難しい言い方になってしまいましたが要するに、
占いを100回して、61回当たるなら偶然ではないといえるのです。
この際外れる方は考えないでおきましょう(゜_゜)

すごくないですか?
100回中たった61回当たるだけで、その人は統計学的に当たる占い師であると証明できるんです。
80回なんて全然いらないわけです。
だから、100回占いをして80回当たるってめちゃくちゃすごいんですよ。

あまりに凄すぎるから、統計学の先生がカンカンに怒ってしまうんですね。
「99.99999999999999…%詐欺だー! 種と仕掛けがあるんじゃ~!」とかなんとかって。
こうして統計学の授業では、今日も「占いは詐欺だ」という話が続けられるのでした…(;・∀・)

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◆◇◆補足2:統計学は証明する学問ではない◆◇◆

結論は変わらないのですが、補足1を少し補足します。
「実に97.72%の確率で有効性が証明されます。」と、僕は言ってしまっていますが…
これ、まずいんです。統計学を知っている人からすると、
「朝比奈ジュンは口だけだな? 統計学のこと何にもわかってないな?」なんて言われかねません。
その理由をご説明します。

“占星術を統計学で証明することはできない”というお話をしてきました。
実は、その理由は2つあるのです。

1.占星術は量を測ることができないから
2.統計学は「証明する」学問ではないから

1つ目については説明しました。
ここで、2つ目を説明しましょう。

統計学は「証明する」学問ではない

どういう意味でしょうか? 実はそのままの意味です。

「統計学的に証明されます。」などと言ってしまいましたが…実は正確ではないのです。
統計学は、何も証明することはできません。

正しく言い直すと、「○○%の確率で、否定することができない。」
だから、先ほどの主張は正確にはこうなるんです。
「『占星術が当たるのは偶然である』という仮説は…2.28%の確率でしか否定することができない。よって帰無仮説は棄却され、占星術の有効性が支持される。」

うへ~~、ど、どうですか?
僕がさっきすっ飛ばしたのもうなずける話だと思いませんか?
内容も言葉も難しくなっていますが、これが統計学のしていることです。
「証明している」のではありません。「否定できない」と言っているに過ぎないのです。

よく勘違いしている人が多いですが、統計学は本当は何かを積極的に証明するものではないのです。
もっと消極的に、「否定はできないよね~」と言っているのです。
ただ、それだとあまりにもわかりにくいので、便宜上「証明できる」ということになっているのです。

統計学についてもっと知りたい人にはお勧めの本があります。
とても面白いのでお勧めです!

「完全独習 統計学入門」小島寛之

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【おまけ:(たぶん)一番有名な占い詐欺の方法】

僕が統計学の授業を受けていた時、先生が嬉しそうに話していた内容で、統計学の本にもよく載っている詐欺の方法があります。
それはこういう方法です。

まず、相談に来た人100人をAグループ50人、Bグループ50人に分けます。
Aグループに、「X社の株が上がるよ」
Bグループに、「X社の株が下がるよ」

X社の株が上がった場合はAグループの人50人がまた相談に来るので、この人たちをもう一度25人ずつCとDグループに分けます。
Cグループに、「Y社の株が上がるよ」
Dグループに、「Y社の株が下がるよ」

Y社の株が上がった場合はCグループの人25人がまた相談に来るので、この人たちをもう一度12人ずつEとFグループに分けます。(1人余るけど気にしない)
Eグループに、「Z社の株が上がるよ」
Fグループに、「Z社の株が下がるよ」

Z社の株が上がった場合、Eグループ12人にとって、あなたは当たる占い師、というわけです。

先生…無理です(=゚ω゚)ノ