2020/09/06 更新
サインのカテゴリーとサインシステム
今回はサインのカテゴリーを説明します。
サインをいくつかのカテゴリーに分類して、そのカテゴリーの意味を覚えていくわけですが、この時、サインシステムが重要になります。
サイデリアルとトロピカルは2020年現在、大体サイン1つ分ずれているため、このずれに対応してサインが1つ変わるのです。
例えば、あるサインのカテゴリーでサイデリアル魚座が該当している場合、トロピカルでは牡羊座が該当することになります。
サイデリアルとトロピカルに慣れないうちは混乱することも多いと思いますので、両方のサインを載せておきます。
ただ、少し注意点もあるので、最後にまとめておきます。
サインのカテゴリー
1.エレメント
2.複数のサイン
3.豊作と不作
4.理性と野獣
1.エレメント(Elements:火地風水)
【エレメント(サイデリアル・トロピカル共通)】
・火 : 牡羊座、獅子座、射手座
・地 : 牡牛座、乙女座、山羊座
・風 : 双子座、天秤座、水瓶座
・水 : 蟹座、蠍座、魚座
朝比奈式もエレメントの分類方法はCL式と同じです。
牡羊座、獅子座、射手座は火のサイン、牡牛座、乙女座、山羊座は地のサイン…となります。
注意点は、このカテゴリーでは、サイデリアルとトロピカルのサインが共通になることです。
他のカテゴリーではサイデリアルとトロピカルでサインが異なるのですが、このエレメントのカテゴリーだけは共通になります。
サイデリアルでの「火のサイン牡羊座」がトロピカルで「火のサイン牡牛座」にならず、どちらも牡羊座になるのです。
他のカテゴリーではサイデリアルとトロピカルはサインが異なるのに、これはなぜなのでしょうか。
その理由は、エレメントという思想自体の、存在の曖昧さにあるようです。
CL式サインのカテゴリーで説明しましたが、このエレメント(火地風水)の思想は古代ギリシャの時代にはすでに存在していたようです。
ところが、前提としてそもそも、『火地風水の各エレメントによってあらゆる物質が構成されている』という思想が、誤りのようなのです。
もちろん、『エレメントはホット、コールド、ドライ、モイストによって構成される』という考え方も同様に、誤りのようです。
では正しい思想は何になるのかというと、これは答えることが難しい問題です。
化学的な答えでは元素ということになると思いますが、さらに視点を小さくして原子核と答えることもできるでしょう。
しかし、エレメントの分類対象は人格から方角まで幅広く、化学的な答えなんて期待していないとも考えられるし…と、考えるとこんがらがってきます。
それでは、誤りと考えられるこの思想がここまで流行した理由は何なのでしょうか。
この理由は残念ながら謎なのですが、何しろ分かりやすいし、覚えやすかったことが理由の一つにあるのかもしれません。
エレメントは時代を超えて大人気。
ファイア、ブリザド、サンダー、クエイク…お馴染みの方も少なくないはず。
ファンタジー系の物語やゲームなどでは系統別の魔法として常に登場します。
こんなわけで?かどうかわかりませんが、この思想は妥当性が曖昧であるにも関わらず、驚くべきことに、占星術でも採用してもらえたようなのです。
遥か昔、このカテゴリーが人の側からリクエストされた時、占星術を創られた方たちはきっとこのようにお考えになったことでしょう。
「なんか随分おかしな思想だけどそんなに使いたいならなんとかしてみるか。だけどダメだったら諦めなよ?ほいっ。あ、なんとなくできた。じゃ、これでいいか。これで使って。でもよくわかんないからサイデリアルもトロピカルも同じにしといたよ。元々がおかしいからこれでいいでしょ。それにしても君たちもあれだよね、例えば北極とか南極とかさ、地球上にも火地風水がない地域ってあるでしょ?そういうのどうするの?え?考えてない?ていうか知らない?あ、そ。」
概ねこのような流れであったろうと想像されます。
その結果、このように、サイデリアルとトロピカルでサインをずらす必要もない、不可思議なカテゴリーが生まれたようです。
ところで、北極南極に火地風水が存在しないというのはどういう意味なのでしょうか。
北極でも火は存在はできると思いますが、例えば探し物をする時、火によって表される場所はないでしょとか、北極は氷の塊だから地もないでしょとか、そういうことかな。
いずれにせよ、このカテゴリーはこのような出自を持つようなので、ここから導かれる分類にも曖昧な部分が多く残ります。
朝比奈式では、このような背景を踏まえた上で、それでも未だ有効な分類を紹介します。
【エレメントの分類対象】
◆ 人の性質
火 : 怒り
地 : 憂鬱、強情
風 : 陽気、思考
水 : さらさら
朝比奈式の分類もCL式とほぼ同じです。
CL式との違いは水のところです。
CL式では、水のサインは『粘着質』として紹介されていますが、朝比奈式では『さらさら』です。
ただし、時代が流れ、人間も色々と複雑になってきたために、人の性質については、すでにエレメントの分類は当てはまらなくなってしまったようです。
もうこんな単純に分類できないでしょ、ということになるようです。
だから正確には、人の性質については、かつて有効だった分類、となります。
しかし困ることはありません。
占星術は元々12分類を基礎とした占いです。
人格や性格についてはこの基本に戻り、その人の太陽星座などを考察しましょう。
◆ 探し物
火 : 火を使う場所の近く、壁の近く、熱い場所の近く
地 : 床の上、地下
風 : 棚の上など床より高い場所、窓の近く、明るい場所(窓やテレビの近く)、2階より上の階
水 : 水の近く、ソファやクッションなど心地良い場所の近く
こちらはCL式と共通です。
探し物で使用します。
◆ 色
火 : 赤、オレンジ
地 : 濃い緑、深い緑、茶、暗い色、黒
風 : 黄、白
水 : 青、エメラルドグリーン
色は火地風水で分類できるようです。
ただ、色の判断ではハウスとの対応関係が大切になります。
最初にハウスを考えて、次にサインのエレメントを考えると良いでしょう。
◆ 方角(サイデリアル・トロピカル共通)
火 : 東
地 : 南
風 : 西
水 : 北
サインは、ここで挙げているように火地風水が東西南北に対応します。
火が東に、地が南に、風が西に、そして水が北に対応します。
これが基本の対応関係になりますが、下に詳しい対応関係を掲載します。
【サインと方角】
◆ 東西南北とサイン
・真東:牡羊座15度
・真西:天秤座15度
・真北:蟹座15度
・真南:山羊座15度
◆ 真東を表す場所の違い
・CL式:トロピカル牡羊座0度
・朝比奈式:サイデリアル牡羊座15度
サイデリアルのサインと方角の対応関係は上図の通りです。
牡羊座が東、山羊座が南、天秤座が西、蟹座が北に対応します。
注意してもらいたいのは、真東が牡羊座0度ではなく、牡羊座15度に対応するところです。
これはCL式と朝比奈式の違いにもなります。
他のサインは方角の微調整に使えるでしょう。
例えば、射手座は東北東、蠍座は北北東になります。
トロピカルも、概ねサイデリアルと同じです。
ただ、サイデリアルと違うところもあり、蠍座と魚座、牡牛座と乙女座の場所が入れ替わります。
この理由は不明です。
2.複数のサイン(Double-bodied : ダブル・ボディー)
【複数のサイン】
◆ サイデリアル
・獅子座、魚座、牡牛座、蠍座
◆ トロピカル
・乙女座、牡羊座、双子座、射手座
複数のサインとは、複数という意味合いを伴うことがあるサインのことです。
例えば、ケンカ相手を表す天体が複数のサインにいると、ケンカ相手が複数いることを表したりします。
複数のサインについては4つのサインを挙げていますが、複数を強く表すサインは獅子座だけ(トロピカルでは乙女座)です。
他のサインは複数を表す強さが比較的弱くなります。
3.豊作と不毛(Fertile & Barren)
【豊作のサインと不毛のサイン】
◆ サイデリアル
・豊作のサイン : 双子座、水瓶座
・不毛のサイン : 牡牛座、蟹座、獅子座
◆ トロピカル
・豊作のサイン : 蟹座、魚座
・不毛のサイン : 双子座、獅子座、乙女座
豊作のサインは双子座、水瓶座の2つです。
不毛のサインは3つありますが、この中で不毛性を強く表すサインは蟹座、獅子座の2つになります。
牡牛座はやや弱い不毛性を表します。
4.理性と野獣(Humane & Bestial)
【理性と野獣】
◆ サイデリアル
・理性的 : 牡牛座、獅子座、乙女座
・獣的 : 牡羊座、蠍座、射手座
・野獣的(獣が凶暴化した野獣) : 蟹座
◆ トロピカル
・理性的 : 双子座、乙女座、天秤座
・獣的 : 牡牛座、射手座、山羊座
・野獣的 : 獅子座
理性的なサインの特徴を強く持つサインは牡牛座、獅子座の2つで、乙女座は特徴がやや弱くなります。
朝比奈式で使用していないCL式サインのカテゴリー
朝比奈式では使用していないサインのカテゴリーについても説明しておきます。
・エレメント(火地風水)の天気
エレメントを用いるかどうか以前に、占星術で天気を占うことが難しいようです。
占星術のどの分野でも、天気について占うことは難しいでしょう。
・男性サイン、女性サイン
このカテゴリー自体が元々存在していないようです。
朝比奈も以前、このカテゴリーを用いて生まれてくる赤ちゃんの性別を何度も占っていましたが、やはり当てはまりませんでした。
興味のある方は試してみると良いでしょう。
・モード
サインを活動サイン、固定サイン、柔軟サインに分類するカテゴリーです。
CL式では、後で学ぶアスペクトで、ある出来事が起こるタイミングを推測する際にも用いられる、非常に重要なカテゴリーです。
しかし朝比奈は、モードは占星術に存在していないと考えています。
これまでにモードを使用してタイミングを推測することはもちろん何度も試しましたが、有効性を確認することはできませんでした。
・大声のサインと無声のサイン(Voiced & Mute)
この分類は存在していないと考えています。
・手足が不自由のサイン
この分類は存在していないと考えています。
5.身体の器官
ホラリー、ネイタルに関わらず、占星術で身体の器官について占うことは難しいでしょう。
サインだけではなく、ハウスにも、天体にも、身体の器官との対応関係は存在しないようです。
それではなぜ、このようなカテゴリーが存在するのでしょうか。
信頼性について、過去と現在に分けて考えてみます。
最初に過去については、有名無実の可能性が疑われます。
つまり、まともな研究も、検証も、実際にはほとんど為されてこなかったのではないかということです。
そのように考える理由は、残っている文献の記述の曖昧さにあります。
この分野の記述を見てみると、具体的な記述に及ぶものは稀で、「昔からそう伝えられているからそう書いた」感が滲み出ているものがほとんどなのです。
到底まともに研究していたとは思えないものばかりです。
まともに研究していた人たちも中にはいたと思うのですが、ごく少数であり、しかも、その人たちの文献は後世まで遺らなかったのではないかと考えています。
ただし、ニコラス・カルペッパー(Nicholas Culpeper)のような例外的な方もいらっしゃいます。彼の本『Astrological Judgement of Diseases from the Decumbiture of the Sick (1655)』は研究者のそれです。
しかし内容はどうなのでしょうか。朝比奈も彼の方法に従い何度か試しましたがさっぱりでした。
JF式でも詳しく取り上げられているのですが、有効性は疑問です。
次に、現代に目を移しましょう。
現代の研究であれば、信頼性は高いのではないでしょうか。
何しろ過去とは異なり、研究にはもってこいの環境が揃っています。
難しい天体軌道の計算はコンピュータが担ってくれるし、時計は正確で、多くの場合、母子手帳には生年月日も生まれた時刻も記載されています。
ホラリーもネイタルも高い精度で研究を進めることができるでしょう。
このような時代の背景もあり、朝比奈の好きなジョン・フローリーは、JF式の中でこの占いを多用しています。
JF式では身体との対応関係について、サイン、ハウスだけでなく恒星も用いています。
記述を追いかけていても、おかしな印象は受けません。
これなら、多くの人たちがこのカテゴリーを使用しているのも納得できる話です。
このように、過去の研究の信頼性は低いものの、現代の研究であれば信頼性は高いと考えられます。
しかし、繰り返しになりますが、朝比奈は占星術で身体について占うことはできないと考えています。
JF式でこれを学び、試したこともありましたが、当てはまりませんでした。
ここは意見の分かれるところかと思いますので、あなたも試してみるとよいでしょう。
◆ 補足
このことを書くかどうか悩みましたが書いておきます。
『占星術で身体について占うことは難しい』と書きましたが、実は占星術を創られた方たちは、かつてこの対応関係を実現させようと試みてくださったようです。
その際、一部のみ実現できたもののそれ程うまくいかず、大部分は実現できなかったそうです。
その一部とは、サインと身体の対応関係です。
「あまりうまくいかなかったから、使わないでおいて」という注釈が残るものなのですが、興味のある方は試してみてもよいのかもしれません。
一応実現できた対応関係は3つあるようです。
【サインと身体の対応関係】
・双子座:腕、肩
・獅子座:心臓
・蠍座:頭
サインはサイデリアルです。トロピカルの場合はサインをずらしてください。
腕、肩の場合、サイデリアルでは双子座で、トロピカルでは牡牛座になります。
この一覧を見ていて、双子座、獅子座の対応関係はわかりますね。
CL式のものとほぼ一致しています。
双子座が腕と肩で、獅子座が心臓。
注意して欲しいのは、双子座に『手』は含まれないところです。
でも、蠍座が頭というのは一体どういうことでしょうか。
牡羊座ではないんですね?
さっぱり理由が思い浮かびませんが、順序立てて対応させることが難しかったということでしょうか。
なかなか興味深いところです。
◆ 具合が悪い時は病院へ
重要なことを書き忘れていました。
朝比奈は基本的に、このカテゴリーの使用はお勧めしていません。
『具合が悪くて…』と相談された場合、迷うことなく病院で診てもらうことを勧めましょう。
トロピカルでサインのカテゴリーを使用する時の注意点
サイデリアルでサインのカテゴリーを使う時、これから説明する注意点は不要です。
この注意事項はトロピカルでサインのカテゴリーを使う時にだけ必要になります。
サインのカテゴリーの説明の中では、サイデリアルのサインからサインを1つずらす方法でトロピカルのサインを記載してきました。
しかし実は、この対応は正確とは言えません。
サイデリアルとトロピカルのサインの対応は、ここで記載した通りにはならないことがあるためです。
問題の原因はアヤナムシャにあります。
2020年時点ではおよそ24度になりますが、天体のトロピカルのサインは、本当はサイデリアルの天体の度数とアヤナムシャを用いて計算しなければならないのです。
例えば、『複数のサインのカテゴリー』を考えていて、金星がトロピカル牡羊座4度にいる場合を考えてみましょう。
説明を見てみるとトロピカル牡羊座は複数のサインに当てはまっているので、金星は複数のサインにいることになります。
本当でしょうか?
このホロスコープをサイデリアルにした時、この金星がサイデリアル魚座にいれば、金星は複数のサインにいることになります。
では計算してみましょう。
トロピカル牡羊座4度 – 24度 = サイデリアル魚座10度
OKですね。
金星は複数のサインにいると判断できます。
それでは、もし金星がトロピカルで牡羊座28度にいる場合はどうなるでしょうか?
トロピカル牡羊座28度 – 24度 = サイデリアル牡羊座4度
サイデリアルで魚座にはなりませんでした。
この場合、金星は複数のサインにいることにはなりません。
このように、トロピカルでサインのカテゴリーを考える時、天体のサインは必ずサイデリアルに基づいて判断してください。