2016/8/4 更新
アスペクトは慣れるまでかなり難しく感じると思います。
アスペクト、タイミング、アンティシアがホラリーのヤマ場なので、一つ目のヤマ場になるでしょう。説明が長いのでマスターするためには何度も繰り返す必要があると思いますが、諦めずにがんばってください!
【目次】
1.アスペクトとは
2.アスペクトが必要になる質問
3.5種類のアスペクト
4.アスペクトの性質
5.アスペクトとサイン、オーブ
5-1.オーブ(アスペクトの許容度数)
5-2.オーブ0度のアスペクト
5-3.サイン・アスペクト
6.アスペクトの2つの使い方
7.アプローチとセパレート
8.イベント・アスペクトと天体のスピード
9.アプローチしている天体の表す人が積極的?
10.本当にアスペクトするかどうか必ず確認を
11.最初に発生するイベント・アスペクトだけを考える
12.移動速度の速い天体がそのサインにいる間のアスペクトだけを考える
13.アスペクトを考える時、天体の移動距離は30度まで
1.アスペクトとは
アスペクトとは天体同士が作る角度のことです。
天体同士がくっついていればコンジャンクション(0度、同じサイン)、天体同士が正反対の場所にいればオポジション(180度、反対のサイン)というように色々な名前があります。例えば、東の地平線で太陽と月がくっついていれば太陽と月はコンジャンクションしていて、東の地平線に太陽、西の地平線に月がいればこの2つの天体はオポジションしていることになります。
ホラリーではこれらアスペクトの種類によって、2つの天体が表す物/事/人同士がどのような関係なのか、どのような出来事が起こるのか、そのタイミングはいつなのかというようなことを判断していきます。
アスペクトという言葉は元々「見る」という意味のラテン語で、本来は天体が他の天体のことを「見ている状態のこと」をアスペクトと呼んでいました。ここではわかりやすく天体同士の角度と説明していますが、この元々の意味も覚えておきましょう。
また、クラシック占星術の思想では、天体などに限らず誰かが誰かを「見る」ためには「光を投げかける必要がある」と考えられています。まるで目から懐中電灯でも照らしながら見ているようなイメージでしょうか?
現代の考え方では「見る」ためには「光が目に入ってくる必要がある」わけで、光の向きが反対になっていますね。
古代にはこのような考え方は存在していなかったのかもしれないし、クラシック占星術はギリシャ語、ラテン語、アラブ語などを経由して伝わっているものなので、アスペクトという言葉の定義が翻訳のどこかでズレたのかもしれません。
とにかく、「光を放つからこそその対象を見ることができる」という考え方をとっています。
そこで、例えば夜空に輝いている金星は「光を放っているのでアスペクトできる」という論理に繋がり、クラシック占星術で使用する7天体は全て輝いているので当然アスペクトできることになります。
2.アスペクトが必要になる質問
ホラリーでは相談内容によってアスペクトを使う時と使わない時があります。
基本的に「彼とつきあえる?」「仕事は決まる?」というようなイベントに関わる相談ではアスペクトが必要になり、「彼の気持ちは?」「時計はどこ?」というような状況や状態に関する相談ではアスペクトは不要になります。
ただ、これらは実際には厳密に区別できることではなく、イベントに関わる相談でありながらアスペクトが不要であったり、状況に関する相談でもアスペクトが必要になることもあります。最終的には、ホロスコープにアスペクトが登場していればそのアスペクトが相談に答えるために重要かどうかをその都度判断し、その意味を解釈していくことになるでしょう。
3.5種類のアスペクト
クラシック占星術で使われるアスペクトは5種類あります。
1.コンジャンクション : 0度、同じサイン
2.セクスタイル : 60度、2つ隣のサイン
3.スクウェア : 90度、3つ隣のサイン
4.トライン : 120度、4つ隣のサイン
5.オポジション : 180度、反対のサイン
コンジャンクションは度数差が0度で天体同士が同じサインにいる時のアスペクトになります。おひつじ座19.94度に金星と火星がいますね。度数を引き算してみましょう。
19.94 ー 19.94 = 0度
0度になりました。どちらも同じおひつじ座にいるので、この2つの天体はコンジャンクションしていることになります。
セクスタイルは度数差が60度で、天体同士が2つ隣のサインにいる時のアスペクトです。
このホロスコープでは、さそり座16.29度に土星、やぎ座16.29度に金星がいますね。サインが離れている時はどのように度数差を計算するのでしょうか?
一つのサインは30度なので、離れているサイン分だけ30度を足し引きしながら計算します。ここではさそり座16.29度に土星がいるので、次のいて座16.29度までが30度差、そしてその次のやぎ座16.29度までがちょうど60度差になります。
さそり座16.29度 + サイン2つ分(30度×2=60度) = やぎ座16.29度
金星はやぎ座16.29度にいるので、この2つの天体はちょうど60度離れているというわけです。
もし金星がやぎ座17.29度にいたら、やぎ座16.29度よりちょうど1度多いわけですから(やぎ座17.29度ーやぎ座16.29度=1度)、土星との距離は61度になります。
このように、アスペクトの度数差を計算する時には一方の天体の度数をもう一方の天体のいるサインの度数に対応させて、そこからの距離を計算すると良いでしょう。
スクウェアは度数差が90度で、一方の天体がもう一方の天体から3つ隣のサインにいる時のアスペクトです。
このホロスコープではさそり座22.70度に土星、みずがめ座22.71度に金星がいます。
さそり座からみずがめ座は3つ離れているのでスクウェアの関係に当てはまりますね。
度数差を計算すると、さそり座22.70度の土星からみずが座22.70度までがちょうど90度、金星はみずがめ座22.71度にいて金星はその位置からさらに0.01度離れているため(みずがめ座22.71度 ー みずがめ座22.70度 = 0.01度)、土星と金星は90 + 0.01 = 90.01度離れていることになります。
スクウェアの定義は「90度、3つ隣のサイン」です。ここでの度数差は90.01度なので厳密には90度に当てはまらないのですが、下で詳しく説明する「オーブ」と呼ばれるアスペクトの許容範囲に当てはまるので、この2天体はスクウェアの関係と見なされます。
トラインは度数差が120度で、一方の天体がもう一方の天体から4つ隣のサインにいる時のアスペクトです。
このホロスコープでは金星がうお座13.20度、木星がかに座13.20度にいます。かに座はうお座から4つ隣のサインであり、かに座13.20度はうお座13.20度から120度離れています。
オポジションは度数差が180度、一方の天体がもう一方の天体から6つ隣、つまり正反対のサインにいる時のアスペクトです。
このホロスコープでは金星がふたご座19.00度、木星がいて座19.00度にいてオポジションの関係になっています。
以上、5つのアスペクトの角度を確認しました。
クラシック占星術で使われるアスペクトはこの5つだけなのですが、モダン占星術を勉強した方はマイナー・アスペクトと呼ばれるアスペクト群を使わない事に違和感を覚えるかもしれません。
例えば、セミセクスタイルと呼ばれる30度のアスペクト、クインカンクスと呼ばれる150度のアスペクトなどが代表でしょうか。このようなマイナー・アスペクトに意味がないわけではないと思いますが、クラシック占星術では使われることのないアスペクトです。
この説明はとても難しいもので、僕にもどう説明していいのやらよくわかりません。
僕が書いている朝比奈通信の中でも説明していますが、カップルや夫婦の太陽の位置関係を観察していると、セミ・スクウェア(45度)とクインカンクス(150度)のマイナー・アスペクトはここで登場する5つのアスペクトと同様よく見かけます。二人の太陽の位置が45度差だったり、150度差だったりするのです。
しかし、だからといってクラシック占星術で、ホラリーの中でこれらのアスペクトが登場するかといえば、まずありません。これらのアスペクトがイベント・アスペクト(後述)に繋がることはないのです。
ただ、僕はマイナー・アスペクトについて詳しく考察した経験がないので、他に話せることがない状況にあります。
いずれにせよ、ホラリーではここまで説明した5つのアスペクトだけを用いることになります。
◆ 参照ページ
・vol.27 「太陽星座とつき合いやすさ~その1~」
・vol.28 「太陽星座とつき合いやすさ~その2~」
4.アスペクトの性質
角度を学んだところで、次は性質を学んでおきましょう。
アスペクトはどれも同じというわけではなく、5種類のアスペクトにはそれぞれ固有の意味があります。
【アスペクトの基本的な性質】
1.コンジャンクション : 良し悪しは天体次第で変化
2.セクスタイル : チャンス、穏やかな関係
3.スクウェア : 衝突、遅延、妨害
4.トライン : 調和、とても穏やかな関係
5.オポジション : 衝突、分裂、後悔
1.コンジャンクション : 良し悪しは天体次第で変化
コンジャンクションは2つの天体のエッセンシャル・ディグニティ、レセプションなどで良し悪しが変化するアスペクトです。
天体がベネフィックの天体とレセプションの良い状態でコンジャンクションしていれば良い影響を受けますが、マレフィックの天体と悪いレセプションでコンジャンクションしていれば悪い影響を受けることになります。
最も良いケースを考えてみると、2つの天体によって表される人物同士は幸せな状態で一緒にいるのかもしれません。逆に最も悪いケースでは虐待を受けながらも一緒にいる状態などが考えられます。
コンジャンクション(Conjunction)は「結合、連結」という意味のラテン語ですがクラシック占星術の世界では、「性交、交尾」を意味するコピュレイション(Copulation)という言葉と同義で使われてきました。コンジャンクションはセックスを表してきたわけで、実占の中ではコンジャンクションしている2天体が表す人物同士が体の関係を持つところがしばしば観察されます。
また、コンジャンクションは、正確にはアスペクトの一種ではありません。
5種類のアスペクトということでアスペクトの仲間に分類していますが、これは正確には「結合」といったニュアンスで用いられる用語で、アスペクト、つまり「見ている」というニュアンスは持たない用語なのです。
コンサートのライブ会場を思い浮かべてください。円形のホールで、中心に舞台があるタイプです。あなたは2階のある場所から舞台にいるバンドを観ているわけですが、この時、真正面の席の人は見えますね。これがオポジションに該当します。
目を移動させていけば、120度、90度、60度とほとんどの人は見えているはずです。
しかし、それでも真横に座っている人の顔を正面から見ることは困難なはずです。せいぜい横顔でしょう。
これがコンジャンクションがアスペクトに分類されない理由です。同じ方向を見ている二人の人は、お互いの顔を正面から見ることはできないのです。
実際的には、コンジャンクションがアスペクトに分類されないことを知っていてもそれほど役に立つことはありません。
しかし、例えば「天体に対するノードの影響を考える時にはコンジャンクションだけを考慮します」という説明の本当の意味は理解できるようになるでしょう。
このサイトの、ノードの以前の説明は苦しいものでした。「ノードは光を放つことがないため天体とアスペクトをすることはできないけれど、天体とコンジャンクションすることはできる。」
あれ?アスペクトできないのにコンジャンクションはできるの?と思った方もいるかもしれませんが、その疑問はもっともで、その理由がここにあります。
コンジャンクションはアスペクトではなく、単に結合状態を指す用語なのです。
2.セクスタイル : チャンス、穏やかな関係
アスペクトを大きくまとめるとセクスタイルとトラインが2天体の穏やかな関係を表し、スクウェアとオポジションが衝突や分裂を表します。
セクスタイルは穏やかな関係の他に機会(チャンス)なども表すアスペクトです。2天体によって表される人たちは穏やかな関係を保つと共に、2人には何かしら調和的な関係を築くチャンスがあるのかもしれません。
セクスタイルとトラインはどちらも穏やかな関係を表すアスペクトですが、両者を比較するとトラインの方がセクスタイルより強いアスペクトです。ホラリーから話が逸れますが、セクスタイルよりトラインの方が強い様子は多くのカップルの太陽の位置関係を見ていると納得することができます。例外もありますが、セクスタイルよりもトラインの方が恋愛関係がスタートしやすいのです。
セクスタイルは5種類のアスペクトの中で最も弱いアスペクトです。何が弱いのかというと、このアスペクトはイベント・アスペクトをしても稀にその出来事が起こらないことがあるのです。イベント・アスペクトをしてもその出来事が起こらない可能性を持つアスペクトはこのセクスタイルだけです。実際にその出来事が起こるかどうかは、天体のアクシデンタル・ディグニティやレセプションなどを考えながら判断していきます。
3.スクウェア : 衝突、遅延、妨害
スクウェアとオポジションは衝突などの難しい関係を表すアスペクトです。
このスクウェアは衝突、妨害、遅延のアスペクトで、両者が妨害行為をしていたり、やり取りが遅れたりという関係を表します。ただ、レセプション次第では良い関係や結果に結びつくこともあるアスペクトです。良いレセプションがある場合には苦労をしながらも、遅れながらも友好的な関係を築ける可能性を示します。
4.トライン : 調和関係
トラインしている2天体は争いのない調和関係にあることを表します。
トラインは天体同士が同じエレメントのサインにいる時のアスペクトです。例えば、おひつじ座に月、しし座に太陽がいれば、この2天体は火のエレメントのサインにいることになり、おうし座とおとめ座にいれば地のエレメントのサインにいることになります。
レセプションを考えてみると、このように2つの天体が同じエレメントのサインにいる時、この2つの天体はトリプリシティの天体に対して同じレセプションを持つことになり、調和的な関係を持つ理由が理解しやすくなります。
例えば、お昼のホロスコープでは火のサインのトリプリシティの天体は太陽なので、トラインしている2つの天体が火のサインにいればどちらも太陽に対して良いレセプションを持つことになります。つまり共通の価値観を共有することになるのです。もちろんレセプションを考える時にはマイ・サインやイグザルテーションなども考慮するのですが、トリプリシティのレベルではお互いが共通する価値観を持っているために、トラインの天体同士は意思疎通を図りやすくなり、調和的な関係を保つことができるようになるのです。
「お茶、紅茶、コーヒーの好みはともかくとして…あら、あなたも太陽が好きなのね。私も好きよ。やっぱりお日様は良いわよね!」
ただ、確かにトラインは調和的な関係を表しますが、必ずしも仲が良いために調和的な関係を築いているとは限りません。米ソの冷戦を思い浮かべれば十分だと思いますが、お互いが憎み合いながらも調和的な関係を築くことはできるのです。どのような感情を抱いた上での調和的な関係なのか調べるためにはレセプションをチェックしましょう。天体同士がデトリメントのような悪いレセプションを持ちながらトラインしていれば、両者は冷戦のような状態にあるのかもしれません。
5.オポジション : 衝突、分裂、後悔
オポジションは衝突、分裂、後悔などを表します。
喧嘩別れをしたり、関係に対して後悔を抱いたり、このアスペクトによって表される関係は悪いものになるでしょう。
オポジションのアスペクトには3つの可能性があり文脈によって判断します。
1と2は人間関係の相談に多く、3は物事の相談で多く登場するでしょう。
【オポジションの性質】
1.その人と一緒になるが長続きせず離れていく
2.その人と一緒になるものの後悔が続く
3.あることを成し遂げるものの骨折り損のくたびれ儲け
例を考えてみましょう。「彼とつきあえる?」
アスカーを表す天体と彼を表す天体がオポジションしようとしていたら、 「つきあえそうですが、すぐに別れてしまうか、長く続いたとしても後で後悔する関係になる可能性が高そうです。」
できれば、避けておいた方が良いですね。
どうしてオポジションの関係は悪いものなのかを知るために、天体のレセプションを考えてみましょう。
天体が正反対のサインにいるということは、良いレセプションと悪いレセプションの天体が、つまりマイ・サインの天体とデトリメントの天体が正反対になってしまうのです。
試しに、おひつじ座にいる土星とてんびん座にいる月について考えてみます。
おひつじ座にいる土星は火星が大好きで(マイ・サイン)、金星が大嫌い(デトリメント)ですが、反対にてんびん座にいる月は火星のことが大嫌い(デトリメント)で金星のことが大好き(マイ・サイン)です。このように、お互いの好き嫌いが完全に逆転してしまうのです。
「サッカーが好き?私は嫌い。」「スノボーが好き?私は嫌い。」
正反対の価値観を持つ両者の関係が難しくなることは、容易に理解できるでしょう。
しかし、もし2つの天体同士が、お互いに対して良いレセプションがある時だけは、状況が改善される見込みが出てきます。
しし座の土星とみずがめ座の太陽のオポジションについて考えてみましょう。
土星はしし座にいるので、太陽が大好き、土星が大嫌い。
太陽はみずがめ座にいるので、土星が大好き、太陽が大嫌い。
確かにこの両天体は価値観が正反対ではあるのですが、よく見ると、土星は太陽のことが大好きで、太陽も土星のことが大好きです。価値観は反対であるものの、それでもお互いのことが大好きな状態にあるのです。
このようにお互いのレセプションが非常に良い時(マイ・サインかイグザルテーションの時)には、強く衝突してしまうオポジションのアスペクトであったとしても、関係が崩壊するまでには至らないことが多くなります。
以前「彼と戻れますか?」という相談の中で、レセプションが良い状態の天体同士のオポジションを発見したことがあります。結果的に彼とは戻れたのですが、その後彼は体調を崩してしまい会うことが難しくなっていました。会うことは難しいままでしたが1年経った後でもお二人の関係は良好なままだったので、オポジションのイベント・アスペクトといえどもレセプション次第では関係が崩れないことがわかります。ただ、このケースでも1年後でさえ彼に会うことは難しいままだったので、レセプションが良い状態でも、やはりオポジションは難しいところのあるアスペクトだと思います。
なお、良いレセプションがお互いに対してのものではなく、一方的な場合でも、関係は継続する可能性が出てきます。
例えば、しし座の木星とみずがめ座の太陽を考えてみると、木星はしし座に対してマイ・サイン、太陽は木星に対して強いレセプションを持ちません。しかしこの状態であっても、木星の想いが通じるというか何というか、両者の関係が壊れずに継続することがあるのです。
アスペクトの基本的な性質は以上です。
セクスタイルとトラインは穏やかな関係を表し、スクウェアとオポジションは衝突や妨害などを表し、コンジャンクションは天体次第になります。
ただ、説明の中でも少し触れましたが、アスペクトの良し悪しの判断はそれほど単純なわけなく、アスペクトの基本的な性質に加えて天体のエッセンシャル・ディグニティやレセプションなども含めて判断します。特にレセプションは重要な要素になります。見落とさないようにしましょう。
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◆ 凶角について
クラシック占星術でもモダン占星術でも、セクスタイルとトラインが吉角、スクウェアとオポジションが凶角と説明されることがあります。単純にセクスタイルとトラインは良いけれどスクウェアとオポジションは悪いよという意味です。
ところがこのサイトでは、天体のエッセンシャル・ディグニティ、レセプションも考慮しながらアスペクトを判断しましょうという立場を取っています。これはなぜでしょうか?
それは、このサイトで解説する方法が、アスペクトの判断方法の原型に近いか、もしくは原型に近いもののはずだからです。
元々アスペクトはこのようにアスペクトの性質と天体のエッセンシャル・ディグニティ、レセプションなどから判断するものだったと考えられます。
しかし、恐らく長い歴史のどこかで後半部分の説明が抜け落ちてしまったのでしょう。アスペクトはアスペクトの性質から判断するものという言葉足らずな説明が定着してしまったようです。
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5.アスペクトとサイン、オーブ
【アスペクトするための適切なサイン】
・コンジャンクション : 0度、同じサイン
・セクスタイル : 60度、2つ隣のサイン
・スクウェア : 90度、3つ隣のサイン
・トライン : 120度、4つ隣のサイン
・オポジション : 180度、反対のサイン
天体同士がアスペクトするためには、それぞれの天体が適切なサインにいる必要があります。
適切なサインとは、天体同士のサインがいくつ離れているかということで、例えばコンジャンクションになるためには天体同士が同じサインにいる必要があり、セクスタイルになるには天体同士が2つ隣のサインにいる必要があります。
このことからもわかるように、アスペクトは角度を意味する言葉として使用されていますが、アスペクトを構成するための最も重要な要素はサインなのです。
極端に言い直すと、おひつじ座同士はコンジャンクション、おひつじ座とふたご座はセクスタイル、おひつじ座とかに座はスクウェアというように、アスペクトとはサイン間の角度を指しているのです。
これは非常に重要な考え方で、おひつじ座29度にいる火星とおうし座0度にいる天体は、度数がどんなに近かったとしてもコンジャンクションしているとは見なされません。
サインの仕切りは文字通りの壁になっていて、例えどんなに近かったとしても、オフィスの壁を挟んで立つ2人が一緒になることはできないのです。
アスペクトとは元々このような考え方から生まれたものです。このサイトではアスペクトについてはこのサイン重視に加えて、角度差重視(オーブ3度程度のアスペクトを重視する考え方)を用いていきますが、角度差重視のアスペクトは比較的新しいもので、恐らくはホラリーが使用されるようになった頃から徐々に取り入れられるようになった考え方なのではないか…と考えています。
角度差を重視しない考え方も、重視する考え方も、どちらが誤りということではありません。サイン差のアスペクトをより洗練させていった形として、サイン差に角度差を取り入れた現在の形のアスペクトが生まれてきた、ということです。
余計な話を長々としてしまいましたが、覚えておいていただきたいことはたった1つ、アスペクトにとって最も重要な要素はサイン差である、ということだけです。
少しアスペクトの例を挙げておきましょう。
・コンジャンクション(0度、同じサイン)
○ : おひつじ座19度の火星と、おひつじ座19度の金星
× : しし座29度の火星と、おとめ座0度の金星(しし座とおとめ座は同じサインではないため)
・セクスタイル(60度、2つ隣のサイン)
○ : さそり座16度の火星と、やぎ座16度の金星
× : おとめ座29度の火星と、いて座0度の金星(おとめ座といて座は3つ離れていてスクウェアに分類されるため。サイン・アスペクトになります。)
5-1.オーブ(Orbs : アスペクトの許容度数)
【天体とオーブ(前後)】
・土星、木星 : 9度
・火星 : 8度
・太陽 : 15度
・金星、水星 : 7度
・月 : 12度
オーブとは天体の周囲に広がるその天体の影響力の範囲のことです。
例えば、太陽は15度のオーブを持つ天体なので、太陽の周囲15度以内に入っている天体は太陽の影響力を受けていることになります。同様に、月は12度のオーブを持つ天体なので…以下同文。
このように元々は「天体の影響力の範囲」を表す言葉であったオーブですが、時代が流れるうちに「アスペクトの影響力の範囲」を指す言葉へと変化していきます。
オーブという言葉は元々、「太陽のオーブが15度、土星のオーブが9度だから、太陽と土星は24度以内(15+9=24)で同じサインにいればコンジャンクションだね」というように使われていたものです。
しかし、現在オーブは「太陽と土星はオーブ5度のコンジャンクションをしている」というようにアスペクトについて用いられることの多い用語です。たぶん、いちいち太陽のオーブは何度、土星のオーブは何度と言及するのが面倒になった誰かさんが端折り始めて、「太陽と土星はオーブ○度でコンジャンクションしているね」とまとめるようになってしまったところ、こりゃ便利だねということであっという間に広まったためではないでしょうか。昔の人にとっては天体のオーブというのはそれくらい常識すぎたのでしょう。
いずれにせよ、天体のオーブはそれほど重要性を持つ要素ではないので細かく考える意味はありません。
そして現在の使用法の方が、つまり「オーブ○度のアスペクト」という使い方の方が確かに便利なので、クラシック占星術と銘打っているくせに申し訳ないのですが、このサイトでは基本的にオーブはアスペクトについて用いることにしたいと思います。
天体のオーブに言及する時にはその都度断ることにしようと思います。
さて、それでは実際にはオーブとはどのように使われるのでしょうか?
天体のコンジャンクションを例に取って説明しましょう。
例えば、おひつじ座10度にいる土星とおひつじ座10度にいる木星は度数差が0度で同じサインにいるため、コンジャンクションの定義に当てはまり、コンジャンクションしていることになります。
この時コンジャンクションの定義として度数差は0度なのですが、少しだけオーブ(影響力の範囲、誤差と考えても良い)が認められていて、3度程度離れているくらいならコンジャンクションしていると認めましょう、と考えられています。
これがオーブであり、オーブはどんなアスペクトでも大体2、3度程度まで許容されます。
3度以上離れていれば直ちに影響力を失うかと言えばそんなことはなく、適切なサインの関係にあればどんなにオーブがあったとしても穏やかな影響力は持ち続けます。このように、アスペクトのオーブは前後3度程度までと言っても、前後3度以上離れていると少しずつ影響力が落ちていきますよという程度の意味なので、オーブについて細かくこだわる必要はありません。
アスペクトのオーブは3度程度と覚えておきましょう。
例えば、おひつじ座10度にいる土星は、てんびん座7度~13度くらいの範囲にいる金星とオポジションしていると考えられるのです。このようにオーブ3度程度の範囲内のアスペクトはオーブ・アスペクトと呼ぶことにしたいと思いますが、オーブ・アスペクトの使い方は下で解説します。
※クラシック占星術の歴史の中で、オーブ(orb)という言葉の本当の意味は「天体影響力の範囲の直径」のことでした。
例えば、上のところで太陽のオーブは15度ですと説明しましたが、本当は太陽のモイティ(moiety:半径)は15度です、と説明しなければならなかったのです。太陽の本来のオーブ(影響力の直径)は30度です。
このモイティという言葉が、どういう経緯か、たぶんどんどん端折られたのだと思いますが、結局オーブという言葉に置き換わってしまったため、現在でもオーブという言葉は「範囲の直径」を表すのか「範囲の半径」を表すのか、それとも「アスペクトの範囲」を表すのか混乱しています。
5-2.オーブ0度のアスペクト(イベント・アスペクト)
オーブ0度のアスペクトは、伝統的にイグザクト・アスペクト(Exact aspects : 正確なアスペクト)と呼ばれます。2つの天体の度数を引き算した時、その度数差がアスペクトの定義に正確に当てはまる状態を指しています。
例えば、ふたご座20.15度の土星とふたご座20.15度の金星はオーブが0度のコンジャンクションなのでこの定義に当てはまります。ふたご座20.15度の土星としし座20.15度の金星も度数差が丁度60度になり、イグザクトのセクスタイルと呼ばれます。
一方ふたご座20.15度の土星とふたご座21.15度の金星はオーブが1.00度(21.15ー20.15=1)なのでイグザクトの定義に当てはまりません。
このイグザクト・アスペクトのことを、このサイトではイベント・アスペクトと呼びたいと思います。
その理由は、このイグザクトという言葉が「そのイベントが起こるかどうか」を言及するための用語だからです。それならわかりやすく、そのものズバリ「イベント・アスペクト」と呼びつつ解説を進めたいと思いました。イベント・アスペクトの詳細はすぐ下で解説します。
5-3.サイン・アスペクト(サイン間でオーブ・アスペクト)
2つの天体がアスペクトを形成することのできるサインにいる時、2つの天体はサイン・アスペクトの状態にあります。
アスペクトのオーブは考慮しないため、天体の度数差はアスペクトの定義の度数とどんなに離れていても構いません。
これまで説明した通常のアスペクトでは、おひつじ座0度にいる土星とおひつじ座3度にいる金星はコンジャンクションと考えますが、おひつじ座0度にいる土星とおひつじ座10度にいる金星をコンジャンクションとは考えません。オーブの度数が3度以上離れているためです。
しかし、この2つの天体は同じサインにいるため、サインとしてはコンジャンクションしていると考えることができます。つまりサイン・アスペクトのコンジャンクションであると考えるのです。
このサイン・アスペクトはイベントを引き起こすイベント・アスペクトではなく、影響を及ぼしあっているオーブ・アスペクト(後述)の特殊版です。
ホラリーでこのサイン・アスペクトは限られた分野でしか使いませんが、第2部の実占編で一部登場します。
サイン・アスペクトは周辺視野に喩えられます。
よく見えてはいないけれど、全く見えていないわけではない状態です。本を読んでるとき、もちろん文字に集中しているのですが、同時に周りの景色も何となく見えていますよね?あの感じです。
オーブ3度くらいまでのアスペクトは中心視野に例えられるでしょう。その対象がはっきり見えている状態です。
6.アスペクトの2つの使い方:イベント・アスペクトとオーブ・アスペクト
アスペクトとは天体同士の角度のことで、火星と水星がセクスタイルになっている、太陽と月がトラインしている、というように使われます。
一見何の変哲もない使われ方ですが、アスペクトという言葉には実は2つの使われ方があります。
それは「アスペクトによるイベント発生」か「アスペクトによる第三者の存在の影響」で、アスペクトという単語はこのどちらかの意味を意図しているのです。
【イベント・アスペクトとオーブ・アスペクト】
◆ イベント・アスペクト
・イベントが発生するかどうかを表す
・オーブ0度のアスペクトになるかどうかだけが重要
ホロスコープを作った瞬間にオーブが何度あっても構わない
◆ オーブ・アスペクト
・第三者の有無と、その影響の性質を表す
・その影響の良し悪しはアスペクトの種類、ディグニティ、レセプションなどから判断する
・ホロスコープを作った瞬間のオーブに注目する
アスペクトのオーブは3度くらいまで
・オーブ・アスペクトは、イベント・アスペクトになる可能性があるので、オーブ・アスペクトのままなのか天体が動いてイベント・アスペクトになるのか注意する
このように2つの意味を持つアスペクトという単語ですが、クラシック占星術では伝統的に、説明の中に「アスペクト」という単語が出てきた場合、どちらの意味なのかは文脈から判断します。
「土星が金星にアスペクトしたからイベントが起こった」、或いは「土星が金星にアスペクトしているから、金星は土星の影響を受けている」という感じです。
しかし初めて学ぶ人にとっては、これらを「アスペクト」という単語で括ってしまうとわかりにくいと思います。
そこで、このサイトではアスペクトの持つこの2つの側面を区別しやすいようにアスペクトの呼び方を「イベント・アスペクト」と「オーブ・アスペクト」の2つに分けておき、紛らわしい時には名前で区別します。
アスペクトは、ある時にはイベント・アスペクトとして登場し、ある時にはオーブ・アスペクトとして登場します。
大切なことは、ホロスコープの中であるアスペクトを発見した時、そのアスペクトがどちらの種類として登場しているのか判断することです。
この区別は難しい時もありますが、それでも多くの場面では区別することができるはずです。
占星術では「アスペクト」という単語が有名すぎて、アスペクトが持つこの2つの側面を区別する重要性がなかなか知られていませんが、この判別こそがアスペクト理解の本当の鍵です。
それでは、両者はどのように異なるのでしょうか?
6-1.イベント・アスペクト : イベントが起こるかどうか判断する
「彼とつきあえる?」「仕事は決まる?」「不動産は売れる?」
このようなイベントについての質問では、質問の主役となっている天体同士のアスペクトを探します。
・「彼とつきあえる?」
アスカーを表す天体と彼を表す天体が、これからイベント・アスペクトするかどうかをチェックします。
・「仕事は決まる?」
アスカーを表す天体と仕事を表す天体をチェック。
・「不動産は売れる?」
アスカーを表す天体と買い主を表す天体をチェック。
このように、イベントが起こるかどうかは、主役の天体同士がイベント・アスペクトをするかどうかにかかっています。
このイベント・アスペクトで注目するポイントは、ホロスコープの時間を進めていった時に天体間のアスペクトのオーブが0度になるかどうかです。ホロスコープを作った瞬間に天体同士が何度離れていても問題ありません。10度離れていても20度離れていても構いません。
占星術ソフトで時間を進めていったときに、その天体同士がオーブ0度のアスペクトになればそのイベントは発生し、オーブが0度のアスペクトにならなければそのイベントは発生しないと判断するのです。
オーブが0度にならないアスペクトをイベント・アスペクトとは呼びません。
もしオーブが0.01度まで近づいても、片方の天体がそこで逆行して離れていってしまったら(オーブが広がっていったら)、イベント・アスペクトにはならないのでイベントは起こらないだろうと判断します。
6-2.オーブ・アスペクト : 第三者の有無とその影響を判断する
オーブ・アスペクトはイベント・アスペクトとは異なりイベントの発生とは強い関連性を持たないアスペクトです。
ホロスコープを作った瞬間に、オーブ3度程度でアスペクトしている天体をオーブ・アスペクトと考えます。
オーブ・アスペクトは、ある天体の表す物/事/人物が、オーブ・アスペクトしている天体の表す物/事/人物と何かしら関係し、何かしらの影響を受けている/影響を与えている/相互に影響していることを表します。
もちろん、この2天体が共に主役の天体同士で、両者のイベント・アスペクトを探している場合には、この2天体のイベント・アスペクトを探します。
オーブ・アスペクトは基本的に、主役以外の天体の、主役の天体に対するアスペクトなのです。
例えば、主役の天体である土星に主役以外の金星がオーブ・アスペクトをしていたら、土星が表す物/事/人と金星が表す物/事/人とが何か関係を持ち、影響し合っていることを表します。
また、「金星があと5度進めばオーブ1度で土星とオーブ・アスペクトする」という考え方はしないので注意して下さい。ホロスコープを作った瞬間にオーブ3度程度でアスペクトしていたかどうかだけが判断基準です。
7.アプローチとセパレート
ホロスコープに表示されている天体は静止していますが、実際の天体は(見かけ上)地球の周りをぐるぐる回りながら常に動いています。
例えば、ホロスコープを作った時、おひつじ座5度に金星、おひつじ座9度に木星がいてどちらも順行している場合、時間を進めていくと、移動速度の速い金星がだんだん木星に近づいていくことになります。
このように、ある天体がある天体に近づいていく様子はアプローチと呼ばれます。この例では、金星は木星にアプローチしている、あるいは金星と木星はアプローチしているなどと表現されます。
なお、アプローチを探す時はほとんどの場合、アプローチしている天体と他の天体とのイベント・アスペクトを探しているはずです。
アプローチとは反対に、二つの天体があるアスペクトの度数差から離れていこうとしている状態は、セパレートと呼ばれます。
例えば、おひつじ座11度の木星とおひつじ座14度の金星がどちらも順行していれば、このままコンジャンクションの度数差である0度から距離が離れていくことになり、金星がセパレートしている、または二つの天体がセパレートしていることになります。
それでは、この2種類のイベント・アスペクトは実占の中でどのように使われるのでしょうか?
【2種類のイベント・アスペクト】
1.アプローチ : 質問時点よりも未来の出来事を表す
2.セパレート : 質問時点よりも過去の出来事を表す
7-1.アプローチ(オーブ0度のアスペクトに近づいていく) : 質問時点よりも未来の出来事を表す
多くの相談内容は未来の出来事についてのものです。
「彼とつきあえる?」「彼と戻れる?」「仕事は決まる?」
このような未来の出来事が起こるかどうかを調べるために、主役の天体同士がアプローチしているかどうかをチェックします。アプローチが発見できれば、そのまま時間を進めていき、両天体がイベント・アスペクトするかどうかを探します。
もし主役の天体同士がアプローチしていてそのままイベント・アスペクトすれば相談されている出来事が起こるだろうと判断し、イベント・アスペクトしなければその出来事は起こらないだろうと判断します。
7-2.セパレート(オーブ0度のアスペクトから離れていく) : 質問時点よりも過去の出来事を表す
ホロスコープを作った時点で天体同士があるアスペクトの度数差から離れていく様子はセパレートと呼ばれます。これはホロスコープを作った時点よりも過去のある時点で、天体同士がイベント・アスペクトしていたことを、つまりその天体同士が表す物/事/人同士に何らかの接触があったことを表します。
例えば、「彼と戻れる?」という相談で、アスカーを表す天体と彼を表す天体がセパレートしていれば、アスカーと彼が過去の時点で何かしら接触をしていたこと(この場合は付き合っていたこと)を表し、そこから現在にかけて離れ始めている様子を表しています。この場合、この先再びアスカーを表す天体と彼を表す天体がアプローチしてイベント・アスペクトをしない限り、二人がもう一度戻ることは難しいと判断することになります。
このように過去の出来事が重要になる相談では、セパレートのアスペクトは重要な判断要素になります。
一方、部屋のどこかにあるとわかっている時計を探す時にセパレートのアスペクトを見つけても特に意味はありません。セパレートしていたとしても、部屋のどこかに必ず時計はあるのです。
※アプローチという言葉を使いましたが、クラシック占星術の中で使われる本来の用語は「アプライング アスペクト(Applying aspects)」です。セパレートは「セパレイティング アスペクト(Separating aspects)」と呼ばれます。
8.イベント・アスペクトと天体のスピード
ホロスコープは、地球から見たある時点の天体の位置を表示しています。
ある特定の時点を切り取っているためホロスコープに表示される天体は動いていませんが、実際にはすべての天体は少しずつ動いています。
そして、ホラリーで主に使われる7天体は、つまり土星、木星、火星、太陽、金星、水星、月はすべて移動スピードが異なります。
地球から最も遠い場所を周る土星が最も移動速度の遅い天体で、地球のすぐ近くを周る月が最も移動速度の速い天体です。
イベント・アスペクトを探す時は、2つの天体がホロスコープのどこでイベント・アスペクトするかも同時に考えるので、それぞれの天体の移動速度を把握しておくとアプローチしている天体のイベント・アスペクトまでの移動距離を把握できるようになります。
実際には占星術ソフトで時間を進めたり戻したりしながらイベント・アスペクトする場所を探すことになると思いますが、それでも大まかな移動速度を把握しておかないとどちらの天体の移動速度が速いのかすぐわからないことになり、困ったことになります。
天体の移動速度と移動距離にこだわる理由は、次のタイミングのページで解説しますが、移動速度が速い方の天体の移動距離が、出来事が起こるまでの期間を表すためです。
どちらの天体が速いのか?その天体はどのくらいの距離(度数)を進むのか?
これらを使用して出来事までの期間を占うのです。
そこで、まずは移動速度の速い天体を判断するためにも、天体の移動速度を覚えておきましょう。
なお、この場合の移動速度は地球からの見かけ上の、ホロスコープ上の移動速度であり、実際の移動速度とは関係がありません。
天体の移動速度は慣例として2つの表によって表されます。これから掲載する表は2つとも、地球から見た天体の一日の移動速度です。
一つは順行も逆行も含めた上での天体の平均移動速度、もう一つは順行中、逆行中に絞った天体の移動速度です。
前者は年間の移動距離を1年の日数である365日で割り算をして算出しています。後者はそのような割り算とは関係なく、順行中か逆行中の通常の速度を表しているだけです。
太陽と月を除く5天体はすべて順行と逆行を繰り返しながら地球の周りを回りますが、順行と逆行の切り替えのタイミングでスピードが遅くなりストップをします。スピードが遅くなった状態は天体にとって特殊な状態に当てはまるので、その特殊な状態を除外して通常の移動速度を覚えておきましょうというのがこの表の趣旨です。
言葉が難しいので戸惑うかもしれませんが、ホラリーで重要な表は後者なのでそちらだけを集中して覚えてください。
◆ 天体が1日に進む平均距離(度数)/年(1度 = 60分)
月 13度11分
水星 0度59分
金星 0度59分
太陽 0度59分
火星 0度31分
木星 0度05分
土星 0度02分
◆ 天体の通常速度
月 13度
水星 1度30分(1.5度)
金星 1度10分(1.1度)
太陽 1度
火星 0度36分(0.6度)
木星 ちょっと動いている
土星 ちょっと動いている
ホロスコープで確認してみましょう。
かに座8.00度に月、かに座23.27度に火星(順行中)がいます。
1) この後2つの天体はコンジャンクションするでしょうか?
2) するとしたら大体どの辺りでしょうか?そこまでに月は何度移動するでしょうか?
1) 月と火星の移動速度を確認し、現在の場所と比較して判断します
月が13度進む間に火星は0.5度進むので、移動速度の速い天体は月ですね。
月はかに座8度、火星がかに座23度なので月は火星にアプローチしていき、コンジャンクションします。
2) 火星と月の移動速度の差を利用して月の移動距離を計算します
・現在の距離
23.27 - 8.00 = 15.27度
・追いつくまでにかかる日数
月と火星は1日に12.4度(13-0.6)ずつ距離が縮まっていきます。15.27度の距離が0度になるまでに何日かかるでしょうか?
15.27 ÷ (13 - 0.6) = 1.23日くらい
・月が1.23日で進む距離
13 × 1.23 = 15.99
月が約16度進んだところで火星に追いつきます。現在月はかに座8度にいるので、8 + 16 = 24度。 かに座24度付近で火星に追いつくことがわかりました。
もう一つ例を考えてみましょう。
やぎ座10度に水星、やぎ座26度に火星がいて、どちらもしばらくは順行するとします。
1) この後2つの天体はコンジャンクションするでしょうか?
2) するとしたら大体どの辺りでしょうか?そこまでに水星は何度移動するでしょうか?
1) 水星と火星の移動速度を確認し、現在の場所と比較して判断します
移動速度を見てみると水星は1.5度程度、火星は0.6度程度で水星の方が速いことがわかります。
水星はやぎ座10度にいてやぎ座26度の火星に対してアプローチしているので、やがてコンジャンクションするでしょう。
2) 水星と火星の移動速度の差を利用して計算します
・水星と火星の現在の距離
26 - 10 = 16度
・水星が火星とコンジャンクションするまでにかかる日数
16 ÷ (1.5 -0.6) = 17.7日
・コンジャンクションするまでに水星が進む距離
1.5 × 17.7 = 26.55度
水星が約27度進んだところでコンジャンクションすることがわかりました。
水星は現在やぎ座10度にいるので、27度進んだ場所は10+27-30=7、みずがめ座7度付近になりそうです。
9.アプローチしている天体の表す人物が積極的?
二つの天体がイベント・アスペクトをする時は、移動速度の速い天体がアプローチしていることがわかりました。
しし座10度に月、しし座15度に土星がいれば、移動速度の速い月が土星にアプローチしながらこれからコンジャンクションするということです。
この時、例えば月がアスカーを、土星が意中の彼を表していて、質問が「彼とつきあえる?」というものなら、「月が近づいているのだからアスカーから積極的に行動するんだね」と考えそうになりますが、このような考え方はしないので注意してください。
アプローチしている天体の表す人物(など)が積極的に行動するわけではないのです。
積極的に行動する方の人物などを判断するためには、その天体のアクシデンタル・ディグニティや一般常識などを考慮します。
アクシデンタル・ディグニティを考えると、例えばアンギュラー・ハウスにいる天体の方がケイデント・ハウスにいる天体よりも積極的に行動できることを表し、コンバストしていない天体の方がコンバストしている天体より積極的に行動できることを表します。
一般常識を考えると、彼が好き…という場合、アスカーから行動すると考えるのが自然でしょう。
なお、どちらが積極的に行動するかを考える際に最も重要な要素は、恐らく、一般常識です。
10.本当にアスペクトするかどうか必ず確認を
天体の移動速度に慣れてくるとホロスコープを一目見ただけで2つの天体がイベント・アスペクトするかどうか判断できるようになります。
「水星がかに座5度、木星がかに座10度だから…すぐにコンジャンクションするね。」
しかし、天体は順行と逆行を繰り返すものなので、見た目通り単純に動いてくれることはあまりありません。
例えば、水星がかに座9度まで進んだところでストップしてしまい、その後逆行して木星にコンジャンクションしないかもしれません。
このようにイベント・アスペクトする直前まで進んだところで逆行してしまうケースは意外と多く、この場合水星と木星によって表されている出来事は起こらない可能性が高くなります。
そのため、特に最初のうちは占星術ソフトを使用して天体同士が本当にイベント・アスペクトをするかどうか、必ず確認してください。
11.最初に発生するイベント・アスペクトだけを考える
ホラリーでは基本的に、主役の天体の最初のイベント・アスペクトに注目して結果を判断します。
主役の天体がある天体とアプローチしながらそのままイベント・アスペクトする時にはそのイベント・アスペクトから結果を判断し、その後のイベント・アスペクトには注目しないのです。
例えば、主役の天体として登場した水星が最初に火星にイベント・アスペクトして、その後土星にイベント・アスペクトしても、最初の火星とのイベント・アスペクトだけに注目するのです。
この理由は、最初のイベント・アスペクトは実際の出来事と結びつきやすく、その先のイベント・アスペクトはあまり結びつきにくいためです。
ただ、これは基本的な判断方法で、2つ3つ先のイベント・アスペクトが意味を持つこともあります。この判断はなかなか難しいのですが、天体の表す意味とアスカーの置かれている状況などから判断できることもあるでしょう。
また、それとは別に例外としてトランスレーションとコレクションと呼ばれる特殊な状況がありえます。
詳しくは色々なアスペクトのページで説明しますが、もし天体同士がトランスレーションやコレクションの条件を満たす時には、2つや3つ先のアスペクトまで考慮することになります。
12.移動速度の速い天体がそのサインにいる間のアスペクトだけを考える
イベント・アスペクトがある出来事を表すためには、移動速度の速い天体が、ホロスコープを作った時にいるサインの中を進んでいる間にアスペクトする必要があります。
移動速度の速い天体がそのサインにいる間にイベント・アスペクトすることができない場合、その出来事は起こらない可能性が高くなります。
金星と火星がイベント・アスペクトすればその出来事が起こるだろうと判断した場合を考えてみましょう。
ホロスコープを見ると、うお座20度に金星、うお座28度に火星。
この時、移動速度の速い金星はうお座にいる間に火星にイベント・アスペクトするだろうか?と考えるのです。
金星がうお座にいる間に火星にアスペクトすればその出来事は起こるだろうと判断し、うお座から出てしまい次のおひつじ座へ入ってからアスペクトするならその出来事は起こらないだろうと判断するのです。
※例外として次のサインの3、4度程度のところまでは出来事が起こる可能性があるのですが、それについては色々なアスペクトのページで解説します。
また、相談内容によってはサインをまるまる通過させてアスペクトを探すケースもありますが、そちらは第2部で登場します。
13.アスペクトを考える時、天体の移動距離は30度まで
当たり前ですが、天体はサインのどこかにいます。
例えば、金星がやぎ座の1度にいたり27度にいたり。
この時、金星はやぎ座を通りすぎるまでに最大でも30度までしか進むことはできません。
やぎ座0度にいる金星がやぎ座を通過すると考えれば簡単ですよね。1つのサインは30度なので、最大移動距離は30度になります。
サインの途中にいれば移動距離はもっと短くなり、例えばやぎ座27度にいる順行中の金星がやぎ座を通過するまでに移動する距離は3度(30-27=3)です。
これは、上で解説した「移動速度の速い天体がそのサインにいる間にイベント・アスペクトをしなければその出来事は起こる可能性が低くなる」という約束事のために導かれるルールです。
移動速度の速い天体がそのサインにいる間にイベント・アスペクトしなければならないのだから、1つのサインが30度である以上、その天体を30度以上進めてイベント・アスペクトを考えるわけがないよね、というお話です。
これは次に解説するイベントまでのタイミングを考える際に役立つルールで、このルールにより、出来事が起こるまでのタイミングは基本的に1~30までの数字に単位をつけて考えることになります。
一応天体がサインの中を順行と逆行を繰り返した場合、天体は30度よりも多く移動することになりますが、実際問題として順行と逆行を繰り返しながら天体がのんびりアプローチするようなことはまず起こらないため、このケースを考慮する必要はありません。
お疲れ様でしたm(_ _)m
このページは長かったですね…
内容がとても難しいと思うので、第2部に入ってからも何度も繰り返し読んでみてください。