4-2.サイン法の補足

2017/8/24 更新

エッセンシャル・ディグニティに関連して登場する用語や知識などを解説しておきます。
これらを理解しておくことで、エッセンシャル・ディグニティに対する理解がより深まるでしょう。

【サイン法の補足】
 1.エッセンシャル・ディグニティの矛盾
 2.アルムーテン、ディスポジター
 3.ベネフィック、マレフィック

1.エッセンシャル・ディグニティの矛盾

エッセンシャル・ディグニティの表をよく見てみると、時々矛盾がありますね。
良い・悪いが混じっている場所が存在しています。
例えば、CL式で木星はふたご座にいる時フォール(悪い)になりますが、同時にトリプリシティ(良い)にもなります。
これは一見矛盾しているように見えますが、矛盾ではなく、「悪いところもあれば良いところもある」という意味になります。

2.アルムーテン、ディスポジター

アルムーテンとディスポジターは、エッセンシャル・ディグニティを利用した天体の選び方です。
ある方法でエッセンシャル・ディグニティを調べ、その結果として選んだ天体が、アルムーテンになったりディスポジターになったりするのです。
CL式ではどちらも使われる一方、JF式ではディスポジターだけが用いられています。

アルムーテン(Almuten)

CL式でアルムーテンは、ハウス・ルーラーとして使われることがあります。
何らかの理由でハウス・ルーラーが使えない時に、代わりとして用いられます。
例えば、ロード2は第2ハウス・カスプの支配星になりますが、この天体が既に他の役割で使われてしまっていてロード2として使えない場合、ロード2の代わりとしてアルムーテンを使う方法が説明されています。
アルムーテンを見つける方法は以下の通り。
あるサインの特定の度数で、エッセンシャル・ディグニティが最もたくさんある天体がアルムーテンになります。

【アルムーテンの選び方】
 1.5つの良いエッセンシャル・ディグニティに点数を振る
 2.あるサインの度数において、すべての天体についてエッセンシャル・ディグニティの点数を足し算する
 3.その点数を比較し、最も高い点数を持つ天体をアルムーテンとして採用する

【エッセンシャル・ディグニティと点数】
 ・マイ・サイン:5
 ・イグザルテーション:4
 ・トリプリシティ:3
 ・ターム:2
 ・フェイス:1

最初に、5種類の良いエッセンシャル・ディグニティに対して、上記のように便宜的な得点を振ります。
次に、あるサインの度数で、該当するエッセンシャル・ディグニティの点数を足せばアルムーテンが出てきます。
試しにお昼のチャートで、おひつじ座の10度のアルムーテンを見つけてみます。
おひつじ座10度のエッセンシャル・ディグニティは以下の通り。
・マイ・サイン : 火星
・イグザルテーション : 太陽
・トリプリシティ : 太陽、木星
・ターム : 金星
・フェイス : 火星
登場した天体ごとに点数を計算します。
・火星 : マイ・サイン5 + フェイス1 = 6
・太陽 : イグザルテーション4 + トリプリシティ3 = 7
・金星 : ターム = 2
・木星 : トリプリシティ = 3
得点の一番高い太陽がアルムーテンになります。

◆ 2つ以上の天体がアルムーテンになることがある
計算した点数が同じ場合、アルムーテンは2つあることになります。
こういう時は、アクシデンタル・ディグニティや他の天体からのアスペクトなど、状態の良い天体をアルムーテンとして選ぶことになります。
例えば、アンギュラー・ハウスにいる天体とサクシーデント・ハウスにいる天体が同じ点数になった場合は、アンギュラー・ハウスにいる天体をアルムーテンとして選びます。

◆ アルムーテンの賛否
アルムーテンについては、使うかどうかで意見が分かれています。
使う人も使わない人もいます。
ジョン・フローリーはホラリーに限らずネイタルでも他のどの分野でも、アルムーテンは使用しないことを勧めています。
エッセンシャル・ディグニティはそれぞれの「質」が異なり、足し算ができるような要素ではないため、足し算で計算することがおかしいと思うそうです。

ディスポジター(Dispositor)

ある天体に対して、その天体のいるサインの支配星が、ディスポジターと呼ばれることがあります。
例えば、おうし座にいる土星に対して、この土星のディスポジターは金星(おうし座の支配星)になり、しし座にいる火星に対して、この火星のディスポジターは太陽(しし座の支配星)になります。
この例ではディスポジターをマイ・サインの支配星から選んでいますが、ディスポジターの選び方は、他のエッセンシャル・ディグニティの支配星を使うこともあります。
例えば、おうし座にいる天体のイグザルテーションのディスポジターは月になります。
ただし伝統的には、何も注釈がない状態でディスポジターという言葉が出てきた時には、マイ・サインの支配星のことを指しています。
例えば、「ロード10のディスポジターの火星が…」という記述が出てくれば、ロード10がおひつじ座かさそり座にいる、ということがわかります。

3.ベネフィックとマレフィック

天体はベネフィック/マレフィックと呼ばれることがあります。ベネフィックは良い、マレフィックは悪いという意味なので、「この木星はベネフィック」という表現は、この木星は良いことを表している、という意味で使われています。
このベネフィック/マレフィックの分類方法は、現在二通りの方法が主に用いられています。
CL式では天体で分類していて、現在に至るまでこちらが主流です。
JF式では、サイン法のエッセンシャル・ディグニティで分類しています。こちらは一部の人たちに人気です。
それぞれ説明しましょう。まずはCL式から。

【ベネフィックとマレフィック(CL式)】
 ・ベネフィック : 木星、金星
 ・マレフィック : 土星、火星

CL式では、木星と金星がベネフィック、土星と火星がマレフィックに分類されます。他の天体についてこの区別はありません。
木星はグレート・ベネフィック(Great Benefic)、金星はレッサー・ベネフィック(Lesser Benefic)と呼ばれていて、木星の方がすごく良い天体、金星の方はほどほどに良い天体、と区別されます。
土星はグレート・マレフィック(Great Malefic)、火星はレッサー・マレフィック(Lesser Malefic)と呼ばれます。先ほどと同様に、土星はとても悪い天体で火星はほどほどに悪い天体、という区別です。
つまりCL式では、サイン法でどんなにエッセンシャル・ディグニティが悪くても木星と金星は良い振る舞いをするベネフィックであり、どんなにエッセンシャル・ディグニティが良い状態でも土星と火星は悪い振る舞いをするマレフィックである、という考え方なのです。
こういうのを眺めていると、サイン法の意味って何なの?と訊きたくなります。
たぶん、同じことを思ったのでしょう。次にジョン・フローリーの説を紹介します。

【ベネフィックとマレフィック(JF式)】
 ・ベネフィック : エッセンシャル・ディグニティが良い天体
 ・マレフィック : エッセンシャル・ディグニティが悪い天体

JF式では、天体はサイン法のエッセンシャル・ディグニティによってベネフィックとマレフィックに分類されます。
サイン法でエッセンシャル・ディグニティ良い状態ならばベネフィック、悪い状態ならばマレフィックに分類しています。