9.アンティシア

2016/8/25 更新

ホラリーで登場する主役の天体は♄土星、♃木星、♂火星、☉太陽、♀金星、☿水星、月の7つです。
しかし、今回から学ぶアンティシアを使うようになると、主役の天体は倍の14個になってしまいます。ホロスコープには7つの天体しか表示されていませんが、占いをする時には14個の天体を考えるようになるのです。
ホラリー最後のヤマ場です。理解が難しく使いこなすまでに時間がかかると思いますが、頑張ってください。

【アンティシア】
 1.アンティシアとは
 2.アンティシアの場所
 3.☌コンジャンクションと☍オポジションだけ
 4.「隠れた」という意味を持つことがある
 5.通常のイベント・アスペクトの妨害になりにくい
 6.エッセンシャル・ディグニティは天体本来の場所で考える
 7.イベント・アスペクトとオーブ・アスペクト
  7-1.イベント・アスペクト
  7-2.オーブ・アスペクト
 8.ハウス・カスプに☌コンジャンクションしている時の意味
 9.妊娠と死の表示
 10.アンティシアを使う難しさ

1.アンティシアとは

アンティシア(Antiscia)は「影」という意味の単語で、アンティッシャン(Antiscion)とも呼ばれます。このサイトではアンティシアで統一します。
アンティシアはある特殊なアスペクトについて使われる用語です。
「☉太陽と月がアンティシアで☌コンジャンクションしている(The Sun conjuncts the Moon by antiscion.)」というように、ある特殊なアスペクトを指してアンティシアと呼んでいるのです。
「アンティシアでアスペクトしている」とは「影でアスペクトしている」という意味になります。
ところが、この意味をそのまま日本語で説明し始めるとかなりわかりにくくなってしまうので、このサイトではわかりやすさを優先するため品詞も意味も捻じ曲げて、「アンティシア = 仮想上の天体」として説明を進めたいと思います。

アンティシアは影という意味なのですが、これは天体の影を意味しています。
ホロスコープに表示される7天体は全てホロスコープ上にもう一つ実体を持たない「影の居場所」を持っているよ、という意味で、言い換えるとホロスコープには、表示されている7天体の他に表示されていない7天体が存在している、ということになります。影分身のイメージでしょうか。
そのため占いをする時には、その天体があたかも二つ存在しているように取り扱うことになります

いくつかの相違点はありますが、実際の天体とアンティシアの扱い方は基本的に変わりません。実際の天体もアンティシアも同じように扱ってください。ホロスコープに表示されている♀金星は1つですが、頭の中では常に2つの♀金星を想定しながら占うのです。
例えば、ホロスコープに表示されている♀金星がマレフィックの天体と☌コンジャンクションしていれば、このアスペクトは♀金星にとってのダメージになります。同様に、ホロスコープに表示されていない♀金星のアンティシアがマレフィックの天体と☌コンジャンクションしている時も、♀金星にとってのダメージであると考えるのです。

アンティシアのイメージを掴むために、ホロスコープでアンティシアを見てみましょう。

antiscia-aspect-ex-010

月と♀金星のアンティシア(仮想上の天体)を探してみます。
アンティシアの詳細は後で解説するので、ここでは雰囲気を感じ取ってください。
まず月からいきましょう。
実際の☽月は♊ふたご座5.03度にいます。この☽月はホロスコープに表示されています。そして月のアンティシアは、ホロスコープには表示されていませんが、♋かに座24.97度にいます。
次に♀金星の場所を見てみましょう。
♀金星は♑やぎ座11.93度にいます。これが実際の♀金星の位置になります。
この♀金星のアンティシアは♐いて座18.07度に存在しています。やはりホロスコープに表示されていませんね。
こんな具合で、ホロスコープに表示される全ての天体がホロスコープのどこかにアンティシアを持っています。

2.アンティシアの場所

アンティシアがどこにあるかはアンティシアの見つけ方のページで詳しく説明します。

3.☌コンジャンクションと☍オポジションだけ

アンティシアに対して考えるアスペクトは☌コンジャンクションと☍オポジションの2つだけです。
イベント・アスペクトでも、オーブ・アスペクトでも、この2つのアスペクトだけを使用します。他のアスペクトは使用しないので注意してください。

なお、アンティシアに対する他のアスペクトに意味がないわけではないと思います。
カップルや夫婦の☉太陽の位置を比べると、一方の☉太陽のアンティシアに対してもう一方の☉太陽が△トラインや□スクウェア、*セクスタイルになっているところをちょくちょく発見します。
それでも、☌コンジャンクションと☍オポジション以外のアスペクトがホラリーで登場することはまずないでしょう。恐らく、この2つのアスペクト以外のアスペクトは、特にホラリーでは、アンティシアにとってはかなり無理のあるというか、力不足というか、精一杯がんばってもそのアスペクトまでは手が回りません…ということになるのではないかと思います。
◆ 参照ページ
 ・アンティシアに対するその他のアスペクト

また、クラシック占星術の中でアンティシアの☌コンジャンクションと☍オポジションには以下の通り固有の呼び方がありますが、このサイトでは使用しないことにします。
・アンティシア(antiscia) : アンティシアの☌コンジャンクション
・コントランティシア(contrantiscia) : アンティシアの☍オポジション

4.「秘密」や「隠された」という意味を持つことがある

アンティシアは「秘密」や「隠された」という意味を持つことがあります。
例えば、「彼とつきあえる?」
アスカーを表す天体が彼を表す天体とレセプションなどが良い状態で普通のアスペクトをすれば、このアスペクトはつきあえる可能性を表します。しかし、もしアンティシアの天体とアスペクトをした場合は、隠されたつきあいが発生する可能性を表すのです。
「隠された」という意味は、現実の二人の状況によって様々な形式を取ります。
親戚に秘密にしておきたいだけのつきあいから、駆け落ち、不倫、内縁関係などもあり得るでしょう。このうち代表的なものは不倫ですが、以前「結婚できる?」という相談でアンティシアとの☌コンジャンクションを見かけたことがあり、この時は微笑ましいことにサプライズプロポーズという結果でした。

5.通常のイベント・アスペクトの妨害になりにくい

イベント・アスペクトには妨害が発生することがあり、この時は基本的に、妨害されたイベント・アスペクトの表す出来事は起こらないだろうと判断します。
そして主役の天体が、主役以外の天体のアンティシアとイベント・アスペクトすることで妨害が発生することもあります。ところが、アンティシアとのアスペクトは妨害になりにくいのです。
妨害になるのかならないのか、なかなか判断が難しいのですが、覚えておきましょう。
これは、月のアスペクトが他のイベント・アスペクトの妨害になりにくいことに似ています。

6.エッセンシャル・ディグニティは天体本来の場所で考える

実際の天体も、アンティシアも、エッセンシャル・ディグニティは天体本来の場所を用いて考えます。
例えば、♃木星が♊ふたご座5度にいる時、♃木星のアンティシアは♋かに座25度にいますが、どちらの♃木星のエッセンシャル・ディグニティも、♊ふたご座5度の場所から考えるということです。

7.イベント・アスペクトとオーブ・アスペクト

アンティシアにもイベント・アスペクトとオーブ・アスペクトがあります。
それぞれ見ていきましょう。

7-1.イベント・アスペクト

通常のイベント・アスペクトでは、2つの天体が実際にオーブ0度でアスペクトする場所を見つけ、移動速度の速い天体がアスペクトするまでの移動距離を計算しました。
アンティシアに対するイベント・アスペクトも同じように、移動速度の速い天体が移動速度の遅い天体に実際にオーブ0度でアスペクトするまでの移動距離を計算します。
わかりにくいので例を見てみましょう。

antiscia-aspect-ex-006

♄土星は♐いて座9.05度、☿水星は♑やぎ座5.36度にいます。
♄土星と☿水星は共に順行中で、移動速度を比べると☿水星の方が速いことがわかりました。
通常のアスペクトを考えるとこの2天体は隣合うサインにいるためアスペクトすることはありません。しかし、♄土星のアンティシアに対して☿水星がアプローチしつつ、☌コンジャンクションします。
では、☿水星は何度進んだところで、♄土星のアンティシアに☌コンジャンクションするでしょうか?
これは占星術ソフトを使用して2天体が実際にアスペクトする場所を求め、そこから移動速度の速い天体がいた場所までの距離を求めます。

1.2天体が実際にアスペクトする場所を求める
☿水星が、♄土星のアンティシアとイベント・アスペクトする場所を占星術ソフトを使用して求めます。

最初に♄土星のアンティシア・サインを考えます。
♐いて座のアンティシア・サインは♑やぎ座なので、♄土星のアンティシアは♑やぎ座にいます。
度数を求めます。
30度 - 9.05度 = 20.95度
♄土星のアンティシアは♑やぎ座の20.95度にいます。
♄土星は順行しているので、♄土星のアンティシアはここから♑やぎ座0度の方向へ向かって進むことになります。

次に☿水星の移動を考えるのですが、☿水星はどれだけ進むと♄土星のアンティシアと☌コンジャンクションするのでしょうか?
計算して出せないこともないのですが、占星術ソフトに頼りましょう。
☿水星と♄土星は、☿水星の度数と♄土星のアンティシアの度数の和が30になる場所で、イベント・アスペクトします。
占星術ソフトを使って調べると、☿水星が20.55度に進んだとき、♄土星のアンティシアが同じく20.55度に来ることがわかりました。
☿水星が進んだ距離は、20.55 - 5.36 = 15.19度。
☿水星が♄土星のアンティシアに☌コンジャンクションするまでに進む距離は、15.19度になります。

7-2.オーブ・アスペクト

アンティシアに対するオーブ・アスペクトは、オーブ1、2度くらいが目安になります。
例えば、♐いて座25度にいる♀金星のアンティシアは♑やぎ座5度になるので、♑山羊座3度~7度付近にいる天体とオーブ・アスペクトしていることになります。

8.ハウス・カスプに☌コンジャンクションしている時の意味

天体のアンティシアがハウス・カスプに☌コンジャンクション(オーブ・アスペクト)している時があります。
このときは2つの可能性があります。どちらの意味なのか、アスカーの置かれている状況などから判断してください。
1.そのハウスの事柄に関心がある
2.そのハウスに影響を及ぼしている
例えば、「この仕事は決まる?」という質問の中でアスカーを表す天体のアンティシアが仕事を表す第10ハウス・カスプに☌コンジャンクションしている時には、アスカーがその仕事に関心があることを表しているのでしょう。
また、「彼と結婚できる?」という質問の中で、アスカーの父親を表す天体(ロード4)のアンティシアが彼を表す第7ハウス・カスプに☌コンジャンクションしていたら、アスカーのお父さんが彼に対して何らかの影響を及ぼしていることが考えられます。
どのような影響なのかは、ロード4のエッセンシャル・ディグニティやレセプションなどから考えます。

ハウス・カスプに☌コンジャンクションしていない場合、そのハウスに対するアンティシアの影響は無視します。
つまり、アンティシアがあるハウス・カスプに☌コンジャンクションしていればそのハウスの事柄に対する関心や影響という意味を考えるのですが、それ以外にアンティシアがそのハウスのどこかにあってもアンティシアの意味は考慮しないということです。

9.妊娠と死の表示

「アンティシアのアスペクトでは妊娠と死については表示されない」という考え方があります。
妊娠も死もアンティシアの持つ「隠れた」という意味に合わないため、と説明されています。この論理はわからないでもないのですが、当てはまらないようです。どちらも表示されるでしょう。

10.アンティシアを使う難しさ

ホラリーでアンティシアはついつい見落としがちな要素になります。
何しろホロスコープに表示されていないので、注意していないと気づかないまま占い結果を判断してしまいます。そしてアンティシアは重要な要素になることも多いので、見落としはそのまま占い結果が外れることに繋がります。
ところが、いくら結果を外しても僕はなかなかアンティシアを使えるようになりませんでした。
これは何故でしょうか?
その理由を考えてみたところ、一つの仮説が思い浮かびました。
恐らくアンティシアを見落としてしまう理由は、アンティシアがホロスコープに表示されていないためではなく、現実の天体配置にこだわってきたホラリーで、想定上の天体を使用しなければならないことに対する心理的な抵抗があるためではないでしょうか。
なぜアンティシアという特殊な、想定上の天体が登場するのでしょうか。その考え方が正しいという根拠はどこにあるのでしょうか。
僕は未だにこの理由がよくわからずにいます。
一応ジョン・フローリーが理論的な説明を試みていますが、納得できるものとは言いにくい感じがします。彼の説明を紹介したいのですが、残念ながら意味がよくわからないので紹介することができません。
いつかこの謎が解けた時には、またここで更新したいと思います。

モダン占星術を学んできた方でも、このアンティシアには初めて出会うという方が少なくないと思います。
まだ僕が日本語で占星術の本を読んでいた頃、このアンティシアの使用法を解説した本に出会った覚えがないので、このサイトで初めて占星術を学ぶ人も、モダン占星術を学んだ人も、同じように戸惑うポイントだと思います。
しかし、アンティシアはクラシック占星術の中で非常に重要な技術として位置づけられています。
ホラリーだけでなくネイタルでも、このアンティシアはありとあらゆる場面で活躍することになり、学べば学ぶほどにその重要性は計り知れません。
馴染むまで時間はかかるとは思いますが、必ず使用してください。
アンティシアなしのクラシック占星術なんて考えることもできない…と、そう思える日が必ず来るはずです。