10.恒星

2015/2/18 更新

恒星(Fixed Stars)

空を見上げると、無数の星が散らばっています。
♄土星、♃木星、♂火星、☉太陽、♀金星、☿水星、月をまとめて便宜上”天体”や”惑星”と呼ぶのに対して、星座になっている星は、”星”、または”恒星”と呼びます。
空にはたくさんの星がありますが、西洋占星術で使う星はそのうちの100個ほどです。
ただ、大して使わない星もけっこうあるので、実際にはもうちょっと少なくなります。

恒星は、占星術の段階によって使用頻度と重要性が異なります。
どういう風に変わるのかというと、クラシック占星術を学ぶ順番はホラリー(卜術)から始まり、エレクショナル(時期選定)、ネイタル(運勢)、マンデーン(国家の運勢)と続きますが、上の階層へ行くに従って、使う恒星の数は多くなり、重要度も増していくのです。
“重要度が増す”という言葉は、”1つの恒星がイベントを引き起こす可能性が上がっていく”、と言い換えてもよいと思います。
ホラリーでは、恒星が単体で何かイベントを起こしたり、その結果を決定してしまうことはほとんどありません。

1.マンデーン占星術:全て使う。重要。
2.ネイタル占星術:ほぼ全て使う。重要。
3.エレクショナル占星術:ほぼ全て使う。重要になることがある。
4.ホラリー占星術:限られた恒星だけを使う。重要になることがある。

ホラリーで使う恒星は、以下の通りです。

【ホラリーで使う恒星】
アルゴル(Algol) ♉おうし座26度
アルキュオネ(Alcyone) ♊ふたご座0度
アルデバラン(Aldebaran) ♊ふたご座10度
レグルス(Regulus) ♍おとめ座0度
ビンデミアトリクス(Vindemiatrix) ♎てんびん座10度
スピカ(Spica) ♎てんびん座24度
アンタレス(Antares) ♐いて座10度

一覧は2014年現在の大体の場所です。
恒星は、英語では【Fixed Stars:フィクスト スターズ】と呼ばれていて、固定された星、という意味ですが、実際には、72年で約1度動きます。
つまり、アルゴルは今♉おうし座26度なので、あと、4度…(1つのサインは30度です)
72 × 4 = 288年
288年後には、♊ふたご座0度に移動するということです。
もう生きてないな…(・・;)
(注意:本当はアルゴルは26.××度にいるので、もうちょっと(って言っても50年くらいかな?)早く♊ふたご座に移動します)

なお、この恒星の選び方はジョン・フローリーが選んだものだと思います。
もっとたくさんの数の恒星を使ってホラリーをしている人もたくさんいます。
およそ20年前くらい前、ジョン・フローリーはホラリーで、もっとずっと多くの恒星を使っていたのですが、時が経つにつれてどんどん減っていきました。
「何年も経験してみてわかったんだけど、ホラリーではここで挙げた恒星だけで十分」ということです。

恒星の使い方

恒星はそれぞれ独特の意味を持っています。
この意味が重要です。
なぜなら恒星は、恒星の持つ意味合いがその質問に関連するときにのみ、重要になる可能性を持つからです
例えば、アルゴルは”死”に関連するので、死についての質問ではアルゴルは重要になる可能性があります。
レグルスは”成功”に関連するので、成功に関する質問ならばレグルスが重要になる可能性があります。
「…可能性がある?」
そう、そこが重要なんです。恒星は、これまで学んできたディグニティ(良さ)やレセプション(好き嫌い、関心)の示す結果を覆すことはほとんどないのです。
だから、恒星の意味だけに飛びついて占い結果を出さないよう、くれぐれも気をつけてくださいね!

恒星は、ハウス・カスプか、質問に関連する天体、もしくはアラビアン・パートにオーブ1度くらいで☌コンジャンクション(0度、同じサイン)している時だけ使う

この理由は、恒星がその影響力を発揮するためには、“媒体”が必要になるためです。
媒体というのは、”必要なモノ”、というような意味で、例えば、東京と大阪で会話(電話)をするためには、お互いが”電話機”を持つ必要がありますよね?
電話機がなかったら、遠距離の会話は成立しないわけです。
同様に、恒星が地上に影響力を持つためには、“ハウス・カスプ”か”天体”、もしくは”アラビアン・パート”を経由しなければならないのです。
ハウス・カスプか天体、またはアラビアン・パートを経由しない場合、恒星の影響力は地上に届きません。

◆遠距離の会話
大阪 - 電話機 - 東京
◆西洋占星術で、恒星の影響力が表面に出てくるまでの過程
恒星 - ハウス・カスプ/天体/アラビアン・パート - 地上

☌コンジャンクション(0度、同じサイン)する時、オーブ(アスペクトの許容度数)は1度くらいで考えます。

アスペクトは☌コンジャンクションだけを使う

恒星に対するアスペクトは、☌コンジャンクション(0度、同じサイン)だけを使います。

【使用するアスペクト】
☌コンジャンクション(0度、同じサイン)

【使用しないアスペクト】
*セクスタイル(60度、2つ隣のサイン)
□スクウェア(90度、3つ隣のサイン)
△トライン(120度、4つ隣のサイン)
☍オポジション(180度、反対のサイン)

恒星に対するイベント・アスペクト(イベント発生)は考えない

恒星の使い方は、オーブ・アスペクト(相互に影響)のみです。
つまり、ホラリーのホロスコープを作った瞬間に、天体やハウス・カスプが恒星に☌コンジャンクション(0度、同じサイン)しているかどうかだけをチェックするのです。

「彼との関係はもう終わり?」
ホロスコープを作った瞬間に、彼を表す天体がビンデミアトリクスと☌コンジャンクション(0度、同じサイン)していたら、関係が終わる強い印(しるし)になります。
しかし、「彼を表す天体があと5度進むとビンデミアトリクスと☌コンジャンクション(0度、同じサイン)するから、関係が終わる強い印になる」とは考えません。
このように、天体が恒星とイベント・アスペクトするという考え方はしません。

恒星とアンティシア

7天体にはアンティシア(仮想上の天体)がありましたね。
例えば、♀金星が♓うお座6度にいると、♀金星のアンティシアは♎てんびん座24度にいることになります。♎てんびん座24度にはスピカがいました。
Q:この場合、♀金星のアンティシアはスピカと☌コンジャンクションしていると考えるのでしょうか?
A:7天体のアンティシアが恒星と☌コンジャンクションしていたとしても、恒星の意味を考えることはありません。
7天体のアンティシア(仮想上の天体)は使わないようにしてください。

それでは、一つずつ見ていきましょう。

アルゴル(Algol) ♉おうし座26度

正式名称:Caput Algol(カプット アルゴル)
ギリシャ神話に登場する英雄ペルセウスに切られた、メデューサの頭です。
西洋占星術の中で最も不運な星です。
頭を失うことを意味します。
しかし、実際に本当に頭を失うことはまずありません。
もちろん、質問が”私は死にますか?”というような種類なら、関係する可能性はありますが、ほとんどの質問ではもう少し抽象的な意味で出てきます。
「首がなくなってしまう程、苦しい…(;_;)」という感じ。
例えば、「この仕事を引き受けていい?」
仕事を表す天体がアルゴルと☌コンジャンクション(0度、同じサイン)していたら、
「とても苦しい仕事ですよ」となります。

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【アクシデンタル・ディグニティのページでも恒星は登場しました】
アクシデンタル・ディグニティの恒星
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アルキュオネ(Alcyone) ♊ふたご座0度

プレアデス星団で最も明るい星です。
このアルキュオネを、プレアデス星団の代表として使っているのです。
“泣き続ける姉妹たち”という意味を持つ星です。
“後悔”がキーワードになります。
物事は、うまく運びません。
また、後で解説しますが、星団や星雲は”視力を傷つける”という意味を持ちます。
そのため、”状況を正確に把握していない”、”欺かれている”という意味を持ちます。

アルデバラン(Aldebaran) ♊ふたご座10度

♉おうし座(サインではなく、実星座)の中で一番明るい、牡牛の目に当たる恒星です。
春分(春の始まり、西洋占星術では一年の始まり)に関連づけられる星で、”良い始まり”を意味する星です。
「引っ越した方がいい?」
アセンダント(Asc:アスカーを表す場所です)やアスカーを表す天体(ロード1)にアルデバランが☌コンジャンクション(0度、同じサイン)していれば、
“新しいサイクルの始まりが適切”という意味になり、”引っ越して良い”という強い印になります。

レグルス(Regulus) ♍おとめ座0度

♌しし座(サインではなく、実星座)で最も明るい、獅子の心臓に当たる恒星です。
“物質的な成功を成し遂げる”ことに強く関係します。
「来年春、昇進できる?」
アスカーを表す天体がレグルスと☌コンジャンクション(0度、同じサイン)していたら、昇進するかなり強いサインです。
「彼とつきあえる?」
アスカーの天体がレグルスと☌コンジャンクションしていても、特に意味はありません。

ビンデミアトリクス(Vindemiatrix) ♎てんびん座10度

ビンデミアトリクスには2つの意味があります。
質問によって、どちらかの意味を持ちます。

1.”別れ”
ビンデミアトリクスの持つ意味の1つ目は”別れ”です。
男女の別れを意味します。
“別れ”に関しては、この恒星は非常に強い影響力を持ちます。
もちろん、天体のディグニティ(良さ)やレセプション(好き嫌い、関心)も考えますが、この恒星は単独でも”関係の終わり”を意味することがあります。
「彼との関係はもう終わり?」
ビンデミアトリクスがアセンダント(Asc:アスカーを表す場所)かロード1と☌コンジャンクションしていたら、かなり強い”終わり”の印です。

2.”愚かな思い込み”
ビンデミアトリクスの持つ2つ目の意味は、”愚かな思い込み”です。
“○○はうまくいくわ。だって、私がそう望んでいるんだから”(論理がおかしい)
“もう私はこれ、できるわ!(本当は努力しないとできない、自信過剰の状態)”
論理的にありえない思い込みを表します。
「彼は私のこと愛してるわ。だって、私が彼のこと愛してるんだから。」(論理的におかしいです)
「(バレーのアタックの仕方)もうわかった!これで勝てる!」(本当にアタックができるようになるために、努力する必要があります)

例えば、「この仕事を始めてもいい?」
ビンデミアトリクスが第10ハウス・カスプ(仕事を表す場所)かロード10(仕事を表す天体)に☌コンジャンクションしていたら、アスカーは何かよからぬ幻想を抱いています。
思い込みから抜け出して、現実と向き合うことが必要です。

スピカ(Spica) ♎てんびん座24度

♍おとめ座(サインではなく、実星座)で明るく輝く恒星です。
聖母マリアと結びつけられる星で、”保護”を意味します。
さらに”西洋占星術で最も幸運の星”で、”慈悲、恵み”をもたらします。
しかしレグルスと異なり、必ずしも”物質的な成功”を意味するわけではありません。
ですから、たとえスピカが質問に関連する天体と☌コンジャンクションしていても、物事がうまくいくわけではありません。
しかし、物事がうまくいかなかったとしても、”何らかの保護の力が働き守られる”ことを表します。
ただ、レグルスと比べると、はるかに”幸せをもたらす”良い星です。

アンタレス(Antares) ♐いて座10度

♏さそり座(サインではなく、実星座)の心臓に当たる恒星です。
ホラリーに限らず、ネイタルでも一番よく出会う恒星、という印象です。
たぶんあなたも、しょっちゅう出会うことになるでしょう。
非常に強力な影響力を持ちます。
アルデバランが”春分”に関連する”始まり”の星であったのに対し、正反対の位置にあるこのアンタレスは”秋分”に関連し、”終わり”を意味します。
あるサイクルや関係が、今終わろうとしていることを表します。

「彼との関係はもう終わり?」
アンタレスが彼を表す第7ハウス・カスプ(彼を表す場所)や彼を表す天体と☌コンジャンクション(0度、同じサイン)していれば、非常に強い”終わり”の印になります。

ただ、常に悪い意味というわけでもありません。
「専門学校を辞めて良い?」
アンタレスがアセンダント(Asc:アスカーを表す場所)か第9ハウス・カスプ(専門学校)、またはロード9(専門学校)と☌コンジャンクション(0度、同じサイン)していれば、学校に行く時期はお終い、という意味になります。
新しい道を探す時です。

視力を傷つける恒星(星団・星雲)

ホラリーでは、上で挙げた恒星以外は基本的に使いません。
ただし例外があって、質問が”視力”に関する時、以下の星雲や星団を使います。
恒星として紹介していたりするのですが、本当は星雲や星団です。
星雲や星団は、たくさんの星が集まっている場所ですが、これは”ぼやけてよく見えない”、そこから”視力を傷つける”という意味になるのです。
“視力”は、そのままズバリ視力に関するものだったり、もしくは抽象的な意味だったりします。
質問が次の2種類のいずれかであれば使用します。

1.「視力を良くする手術を受けていいかどうか?」
2.「今、正確に状況を把握できているかどうか?」

これ以外の質問の時には使いません。

【視力を傷つける恒星(星団・星雲)】
アンドロメダ星雲(Andromeda) ♈おひつじ座28度
カピュラス(Capulus) ♉おうし座24度
プレアデス星団(Pleiades アルキュオネと同じ) ♊ふたご座0度
ヒュアデス星団(Hyades) ♊ふたご座6度
エンシス(Ensis) ♊ふたご座23度
プレセペ星団(Praesepe) ♌しし座7度
コピュラ(Copula) ♍おとめ座25度
フォラーメン(Foramen) ♎てんびん座22度
アキュレウス(Aculeus) ♐いて座25度
アキュメン(Acumen) ♐いて座28度
スピキュラム(Spiculum) ♑やぎ座0度
ファシエーズ(Facies) ♑やぎ座8度
マニュブリウム(Manubrium) ♑やぎ座15度

その他の恒星

先に説明したように、エレクショナル(時期選定)より先へ進むと、使用する恒星の数はホラリーに比べてかなり多くなります。
それらの恒星も、ホラリーで意味を持たないわけではありません。
ある特定の質問では、それらの恒星が持つ意味が重要になることがあります。
例えば、「これから保育士の仕事をしようと思うんです。どうですか?」
仕事を表す天体(ロード10)がカペラ(保護・養育を表す星:♊ふたご座22度)と☌コンジャンクションしていたら、カペラは質問の文脈とぴったり合っているので、おそらく保育士はアスカーにとっての適職でしょう。

しかし、多くの恒星を最初から使おうとすると、意味がわかりやすい恒星に飛びついてしまい、ディグニティ(良さ)やレセプション(好き嫌い、関心)、アスペクトなど、重要な基本の技術を無視しがちになります。
例えば先程の例で考えると、仕事を表す天体がカペラと☌コンジャンクション(0度、同じサイン)していても、レセプション(好き嫌い、関心)が悪かったら、アスカーは保育士の仕事を嫌いなので、やはりお勧めはできません。

このように、その他の恒星は、質問の文脈やアスカーの状況をよく説明しているにすぎないことが大部分なのです
ですから、無理に使うことはありません。
基本に忠実にいきましょう。
基礎の技術にこだわればこだわるほど、占い結果はよく当たります。

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◆ちょっぴり本音
ネイタルに進むと恒星がたくさん登場します。
エレクショナルで恒星についてたくさん学びます~とか言ってますが、エレクショナルではいまいち実感が湧かなくて、結局本当の意味で恒星を学ぶのはネイタルからです。
ネイタルでたくさん恒星を使うようになると(恒星の影響力の強さが実感として感じられるようになると)、ホラリーで占った時も自然と恒星が目に飛び込んでくるようになります。
最初のうちは嬉しいので、ついついたくさん使ってしまいますが、その度に、恒星の持つ意味が占い結果を左右しないところを目撃するんです。
「ああ、ホラリーだと、恒星って本当に使う意味ないんだー」
そのため、ホラリーを何度も繰り返しているうちに、使用する恒星の数は自然と減ってしまいます(@_@)